【河合弘之】
日弁連公害対策環境保全委員会のエネルギー原子力部会の部会員であります弁護士の河合弘之であります。
ただいまからパネルディスカッションを開始いたしますが、その開始に先立って、皆様方に申し上げたいことがございます。
きょうのパネルディスカッションは、いわば推進派と反対派の両方の議論を闘わせたいということで、公平な場を設定するという趣旨でございます。その趣旨にのっとって、科学技術庁に今回のパネルディスカッションについてパネリストを派遣してほしいということを数回にわたって要求いたしました。ところが、科学技術庁は、かたくななまでにそれを拒否しました。私は電話で何回も口論をいたしました。そして、彼らの言い分は、要するに「自分たちは自分たちで説明会をやっているから、そういうものに出る必要はない」、こういうことでございました。私どもは、「日本弁護士連合会という半分公的な団体が、非常に賛否両論あるこの重大な問題について公平な場を設定するのだから、本当に自分たちの政策ややり方に自信があるのなら、みんなの前に出てきて説明をすればいいじゃないか、そして反対派の人たちと議論をすればいいじゃないか」ということを言いました。そして、「いろいろなところに出かけていって説明をするのが公務員たる、公僕たる科学技術庁の務めではないか」ということを言いました。それから、「あくまでも拒否をするなら、その集会で科学技術庁は拒否をしたということを言うぞ」ということまで言いましたけれども、ついに彼らは出てきませんでした。そのことを初めに申し上げておきたいと思います。
では、パネリストの皆さん方を紹介いたします。
こちらから西尾 漠さんでございます。この方は、原子力資料情報室の共同代表のお1人でございまして、また「反原発新聞」の編集長で、反原発運動に数十年にわたって粘り強く取り組んでおられる方です。著書としては、「地球を救うエネルギーメニュー」、これは今入り口で売っております。また、「原発を考える50話」ということで、岩波ジュニア新書で出ております。これも、私も読みましたが、大変な名著でございます。
次に、福島瑞穂さんを紹介いたします。今、政権を左右する総選挙が行われている最中、社民党の看板参議院議員として東京でいろんな演説をして、打って回らなければいけないのを、日弁連と夫の海渡弁護士の力で今日ここに引っ張ってきました。ただ、そういう関係がありますので、途中で失礼させていただくことになると思います。この福島瑞穂さんは、社民党の参議院議員であるとともに、その中で自然エネルギー促進議員連盟−これは超党派の連盟ですが、これの事務局次長をしておられます。そして、今回成立しました特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律の審議の中で質問に立って、その内容は非常に鋭い追及的な内容だったわけですけれども、その内容については、皆様のお手元に議会の議事録がありますので、ごらんいただきたいと思います。
次に、石橋忠雄さんです。この方は青森県弁護士会の弁護士でございまして、長い間原子力発電の問題、特に高レベル廃棄物の問題について取り組んでおられます。そして、現在は原子力委員会の高レベル放射性廃棄物処分懇談会の委員でございます。そしてまた、原子力長期計画策定会議及び第1分科会−これは「国民社会と原子力」というテーマの分科会でございますが、そこの委員も務めておられます。そういう委員会に入って、批判的な立場から粘り強い発言を繰り返しておられる方でございます。石橋先生、よろしくお願いいたします。
次に、栗山 知弁護士です。岐阜県の弁護士会で、先ほど基調報告をいたしました。この若い弁護士さんが何であんなに専門的なことをぺらぺらぺらぺらしゃべるんだろうかと、本当によく知っているのかなと思われた方もいらっしゃると思いますが、この方は京都大学の地球物理学の修士を修了しているという、非常に変わり種の弁護士さんでございまして、本来は原子力、物理、地球物理とか地震とか、そういうことを研究しているはずの方でございますが、7年前から弁護士をして、地元で粘り強く活動しておられるわけですが、今回この問題に本当に熱意を持って取り組んでいる弁護士さんです。
では、お一人お一人に、初めに10分ぐらいずつ基調のお話をしていただきたいと思います。
時間の関係で、まず福島瑞穂さんにお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
【福島瑞穂】
皆さん、こんにちは。私はちょっと声がかすれていまして、どうも申しわけありません。
今国会の中では、原子力を巡るさまざまな問題が議論になっております。先ほど河合さんの方から自然エネルギー促進法の話がありました。やっと国会の中で、エネルギーの問題についての議論がかなりなされるようになっております。私は、いただいた時間が10分なので、ぎりぎり衆議院解散の直前に、残念ながらずさんに成立いたしました高レベル放射性廃棄物の法律、中身の問題点と、そのことについて。二つ目は、自然エネルギー促進法を巡る、今法案ができ上がっておりますので、国会の中でどうなるのか、通したいと思っているんですけれども、そのお話。それから、原子力安全規制行政、第三者機関、これは民主党がとても熱心にやっておりまして、私も基本的には大賛成です。その3点について申し上げたいと思います。
ただ、ちょっと先ほどの感想を申し上げますと、カンプスさんの話を聞きながら、ポリティカルリベンジ、例えば政治的報復のためにネバダに決まったとか、いろんなことが、やはりなぜこんな廃棄物が、例えば北海道、青森、岐阜においてよく議論になるのか。つまり、科学的な問題ではなく、政治的な問題であると彼はおっしゃったんですけれども、実際日本のエネルギーの問題も、本当は政治的に決められているわけですけれども、国会の中のレベルになったということは、大変大きいと思います。
まず初めに、高レベル放射性廃棄物の問題点について、廃棄物の法案について申し上げたいと思います。
私の、審議録がありまして、皆さんの資料の中に参議院の議事録が入っております。もっと興味のある方は、全部、衆参合わせた議事録がありますので、おっしゃってください。
先ほどの基調報告などとも若干重なるのですが、まずこの法案の質問をしまして、本当に思ったのは、プルトニウム政策をそのまま前提にして、この法律を成立させようとしているという、そういうことです。今日本にはプルトニウムが30トンあります。日本と外国も含めて、日本のプルトニウムは30トンも今だぶついております。しかし、この法律は、プルトニウム政策が日本がやり続けることを前提につくられております。先ほど、「孤立する日本の原子力政策」という日弁連の本、あるいは政策の紹介がありましたけれども、そのことが本当に問題であると思います。再処理をして、どんどんどんどんプルトニウムを出す、その過程において廃棄物が出ることを前提にこの法律がつくられているということが第1の問題点です。
第2番目には、この法律は全くの白紙委任の法律であると思います。弁護士は、白紙委任状にはサインをするなと依頼者に言うわけですけれども、この法律は全くの白紙委任です。例えば、候補地の選定基準というのは全く明らかになっていないんですね。それは別の法律をつくりますと言っているわけです。安全基準についても、それは別の法律ですと。つまり、わかりやすく言うと、今度の法律は、とにかく地下300メートルに埋めるということと、電気料金にその処分のためのお金を上乗せしますよということだけ決めて、「原子力はトイレのないマンション」とか言われますが、とにかく捨てるということだけ決めて、その基準や中身については、これから別の法律をつくりますという形になりました。ですから、順序が逆だろうと思っております。極めて白紙委任です。ですから、今後また法律をつくるときに、どういう基準でやるのかということをかなり私たちは注意をして、今度はきちっと審議がされるようにと、国会の内外で一緒に努力をしたいと思っております。
それから、先ほどから岐阜のことが話題になっております。ちょっとそのことで申し上げますと、国会での質問の中で、「深地層研究所やそこでの研究結果は、選定、処分の実施主体の事業にどのように反映されるのか」という質問もしました。でも、非常に明確ではないんですね。それで、何度も質問をして、「試験研究と実施は別ということであれば、深地層研究所などの試験研究施設のあるところは処分実施の候補地には選定されないということを法律上明記すべきではないか」というふうに何度聞いても、そのことについては明文規定を設けるというふうには一切言っておりません。ですから、今回はとにかく、こういう法律をつくって、これは中間的なものだから、これは試験的なものだからとして、とりあえず私が思うには、青森、岐阜、北海道を黙らせるという、そういうための法律かもしれないと思います。
国会の中でもう一つ争点になったことは、地元の同意という、この問題があります。それで、通産大臣は本会議で、「都道府県知事と市町村長の意見を重く受けとめ、十分尊重していく」と述べました。それは同意ということと同じことなのか、どういう意味なのかということは、参議院でも非常に議論になりました。それは、またここがちょっとあいまいなんですね。ただ、「十分に尊重していくということは、意に反しては処分場とはしない、意に反しては行わないということと同義語だ」ということを政府は答えております。弁護士の立場からすると、十分に尊重するということと、同意ということは、法律のレベルとしては違うわけです。ただ、国会の段階では、意に反しては最終的な決定はしないということを言っております。ただ、ポイントは、地元の同意というのは首長の同意でいいんですね。都道府県知事と市町村長の同意ということを通産大臣は国会で答えております。でもそれは、住民投票なり、もっと住民の同意が必要ではないかということは、国会でかなり意見が出ました。
それから、行政は行政区画の単位にこだわっています。でも、これはやっぱりおかしいんですね。例えば、長野県には原子力発電所はありません。でも、新潟で原子力発電所の事故が起きれば、明らかに行政区画、全く関係ないわけですから、長野県にも被害が及ぶと。しかし、国会の答弁では残念ながら、都道府県知事、市町村長という、それだけ上がっております。極端に言うと、青森県知事、それから岐阜県知事、北海道知事を黙らせれば、やれるということではないかと私自身は大変危機感を持っております。
この高レベル放射性廃棄物は、国会の中で実質審議が衆議院と参議院の4日間ずつしか行われておりません。一時は、ロビー活動などが市民団体から非常に活発になされたので、つぶれるんじゃないかという話も途中出ました。しかし、残念ながら、例えば民主党は途中までは反対だったんですが、賛成に転じて、国会の中では社民、共産反対ということで、残念ながら成立しました。ですから、これは国会の内外でもう少し力を、もっとロビー活動なり、私たちの、私自身の課題でもあるんですが、もう少し頑張って、いい審議をするか、あるいは廃案に追い込めなかったものかということは思っております。ですから、国会で何が起きているかという情報発信ももっとしていくことは課題かと思います。時間がないので、次に行きます。
自然エネルギー促進議員連盟が超党派230人で−神道政治連盟、自民党の政治家の数と同じですが、自然エネルギー促進議員連盟超党派230人で発足しました。たくさん与党の先生たちもかなり入っております。法案はほぼできました。自然エネルギー、要するに原子力に依存しないで、太陽光、風力、バイオマス、地熱などを使って、環境に負荷を与えない、循環型のそういうエネルギーをどうやって高めるか。買い取り義務というところまで行きたかったんですが、一応基本計画を電力会社でつくって、それについてチェックをさせるということと、それから買取約款について、それを公表するということの中身で法案を超党派でつくりました。これは、公明、民主、社民、共産、これはこの法案オーケーと言っておりました。しかし、自民党の中がまとまらずに、通常国会に出すということが目的だったんですが、残念ながら通常国会に上程ができませんでした。
これは、国会の中では、原子力推進側と自然エネルギーを推進しようという側の強力なバトルが行われて、原子力促進法は出さない、しかし自然エネルギー促進法も出さないということが自民党の中で、一応両方痛み分けという形で決着をしたというふうに聞いております。どういうことかといいますと、私たちは、自然エネルギーの割合を高めたいんです。今1%、2010年には政府は3%と言っています。そんなけちけちするなということで、EU並みに20%台、もっときちんと自然エネルギーがテークオフして、ある程度きちっとできるように法律をつくりたいと考えて、その法案をつくりました。そのお金、費用をどうするかということで、特別会計、つまりこの電気料金の中に含まれている立地勘定、原子力発電を推進するために料金に上乗せされております。しかし、原子力発電所の立地がなかなかできないので、お金がプールされて、余っているんですね。そのお金を自然エネルギーに振り分けたいと思っているんですが、原子力推進側は、特別会計以外に一般会計からもっと原子力に対してお金を出してほしいと。要するに、バトルが行われまして、今国会では自民党の中はまとまらず、法案は残念ながら出せませんでした。ですから、油断もすきもならないのが国会で、次、特別国会、それから通常国会で、原子力促進法が出るのか、自然エネルギー促進法が出るのか、万が一両方出た場合に、どっちが勝つかみたいな、そういう形になっております。
あと、原子力安全規制行政の推進からの独立を確保する。推進するのと安全というのを分離して、独立しようということに関して、民主党が非常に熱心にやっております。基本的にはこれは正しいと思っております。そういう意味では、国会の中は、どうやってもっと原子力に依存しない社会に移行していくのかという勢力と、いや、やっぱり原子力だという−これは実は与野党問わないんですけれども−という側の非常なバトルの中で今議論が進んでおります。
高レベル放射性廃棄物処分法、残念ながら成立しました。しかし、中身についてはかなり白紙委任なので、これから私たちは頑張って、変に悪用されないように、あるいはとどめを刺すようにということがこれから必要だと思います。
ちょっと時間をオーバーして、済みません。どうもありがとうございました。
【河合弘之】
では次に、西尾 漠さん、お願いいたします。
【西尾 漠】
西尾です。
お手元に、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律審議の中で明らかになったこと」というのが入っていると思います。
ただ、むしろお話ししたいことは、そこで明らかになったことではなくて、むしろ明らかにならなかったこと、このペーパーでいうと、もう1枚目の方に書いたことなんです。国と、それから放射性廃棄物の発生者である電力会社の責任ということについて、この法案そのもの、それから審議の中でもおよそ明らかにならなかった、そのことについてお話ししようと思っているんですが、実は最初の段階で、時間がないというので、その話は後にして、何か明らかになったことのうちで、その中に幾つか書いたことというのは、まさにこの東濃が処分場にはならないというふうに言われている。しかし、そうではなくて、むしろ処分場にされてしまう危険性というのは非常に多く持っているということがあると思います。それも後の議論の中でということにして……。というふうにやっていくと、どんどんなくなってくるんですけれども……。
最初の、頭のプルトニウムの話とか、ここら辺は上田さんの基調にもあったしということで、ちょっと飛ばしまして、3番目、今福島さんが「白紙委任」というふうに言われた問題なんです。
候補地等の選定の要件、それから安全規制について後回しになっている。候補地の選定の要件については、通商産業省令で定めるということになっています。まだ法律そのものの中には幾つか例が書いてあるけれども、非常に漠然としたものしか出されていない。それから、安全規制の方については、これは別の法律で定めるというふうにこの法律の中で書いてあります。普通に考えると、原子力等規制法の改正という形になっていくんだと思いますけれども、いずれにしても、そういったことが後回しになっている。
そのことは、お手元の裏側の方に、これは原子力安全委員会の放射性廃棄物安全規制専門部会というところが出した基本的考え方についての中間整理という段階でのものをとりあえずコピーしました。このスケジュールで見ていただいても、表の右側にある安全規制については、処分の候補地が決まった後で安全審査の基本指針がつくられる、処分予定地が決まった後で安全審査の指針がつくられる、そんなふうに読めると思うんです。実を言うと、この専門部会がつい先週に開かれて、若干修正になったんです。言葉遣いもかわっていて、この「処分候補地」と書いてあるところは「概要調査地区」、それから「処分予定地」と書いてあるところは「精密調査地区」、それから「処分地」と書いてあるところは「最終処分施設建設地」、つまり今回通った法律に沿った形で名前がかえられているんですけれども、別の言い方をすると、要するに今言われている「概要調査地区」というのは、ただ単に調査地区ではなくて、これが処分の候補地なんだということを、逆に言うと非常によくわかります。「精密調査地区」というのは、まさに処分の予定地であるということになって、その上で「最終処分地」が決まってくる。その名称のところは直っていますけれども、説明のところは、その案は、「概要調査地区選定」と書いてありながら、「処分候補地における調査」というふうに、説明のところはそのまま残っているんです。
そんなことを含めて、結局のところ、あらかじめ決められた場所に合わせていろんな基準がつくられていくというふうに、順序がどうしても逆になっていくんではないか。しかも、その審査の基本指針から安全審査指針の間には新しい知見を取り入れるという形になっている。処分場の技術基準等についても、実際の建設段階、操業段階とかで適宜見直すということになっている。結局のところ、選ばれた場所に合わせてそういった基準がどんどん変わっていくんじゃないか。これは、先ほどケビンさんが話したアメリカの話がおそらく同じような形になってくるんではないかと思います。その辺が一つどうしても大きな問題として残るんではないか。しかも、その選定の要件の中では、例えば地下資源の存在というのは除外条件にならないということが、かなりこの法律ではっきりしているという問題があります。
それと、これも今福島さんが言われたことですけれども、都道府県知事、市町村長の同意については、十分に尊重するといいながら、住民の意見は、そうは書いてない。法律そのものを見ると、この法律の中では住民のことについてはどう書いてあるかというと、「概要調査地区等の選定に係る関係住民の理解の増進」というのを基本方針に書くというわけです。まさに、地元の関係住民は理解をするだけというのがこの法律だということが非常によくわかります。そういう形でこの法律がつくられてしまっているということをもう1回改めて、もう通ってしまったわけですけれども、こういう法律なんだ、こういう問題点があったんだ、しかもそれがまさにだれもほとんどの人がわからないうちに決められてしまったということ、であるとすれば、私たちの側からきちんとそのことをさらに広く知らせていくということが必要なんではないかと思っています。
【河合弘之】 はしょらせて申しわけないんですが、福島さんがまた東京で選挙の最後の追い込みに行かなきゃいけないので、最後に発言していただきます。
【福島瑞穂】
そうしたら、先ほど私は時間をオーバーしたので、一つだけちょっと見せびらかしますと、これはキャニスターで私のパートナーがもらってきたミニチュアなんです。この巨大なものが地下300メートルに埋められるということになります。岐阜は、水もおいしいですし、地震も多いところで、地層処分をなぜやるのか、あるいはもし漏れ始めたときに回収を一体どうやってやるのかというのを国会で聞いたんですが、それもまた「別途これから考えます」ということで、非常に恐ろしい審議だったんですが、ちょっとこれを持ってきましたので、見せびらかして、音もなく途中で帰ります。済みません。
【河合弘之】
それでは、西尾さんに大変はしょらせてしまったので、もう少し話をしていただきたいと思います。
申しわけありませんが、西尾さん、もう1回もとに戻って、このレジュメに基づいて話をしてください。
【西尾 漠】
今度は逆に時間をうんとオーバーしそうなんですけれども……。
【河合弘之】
じゃ、そうしましょう。私の不手際で申しわけありません。
それから、西尾さんの補充コメントは後にしまして、石橋忠雄さんに各種委員会の審議に携わったインサイドからの報告というのをお話し願いたいと思います。よろしくお願いします。
【石橋忠雄】
委員会というよりも、私がここに呼ばれた理由の一つというのは、恐らく青森に住んでいるということだろうと思うんですね。私のいるところは青森県のむつ市というところで、ご承知のように原子力船「むつ」が放射線漏れ事故を起こして、長く係留されていたところであります。
ことし、5回目でしたか、フランスからの高レベル放射性廃棄物の搬入がありました。これは、廃棄物がガラスで固められたガラス固化体という形になって来ているんですけれども、合計で272本でしたか、現在青森県の六ケ所村にあるわけであります。この海外から来るガラス固化体、これの放射性廃棄物は、日本がイギリスとかフランスに再処理をお願いしているところから出てきているわけであります。たしか今年だと思いますけれども、フランスの国会で、海外−日本から来ている放射性廃棄物の返還の期限を早くすべきである、こういう報告が両国会で了解されておるわけであります。
一方、昨年私、ちょうどジェー・シー・オー事故の後に、10月でしたか、マレーシアでマレーシア政府の主催する放射性廃棄物、放射性物質の海上輸送に係るシンポジウムというのがあったんですけれども、それに招待されて出たんです。そこではやはり、日本のプルトニウムとか高レベル放射性廃棄物の海上輸送に関するさまざまな検討がなされたわけです。特にあの辺の海洋国家は、事故とか危険というものに対する不安というのは非常に根強いものがあったわけです。今、両先生から特定放射性廃棄物の法律の問題点というのが出されたわけでありますけれども、その処理、処分といいましょうか、あるいは問題のあり方をどうするかということについては、非常に国内・国際関係で対応が複雑な問題というのが中にあるわけであります。
この高レベル放射性廃棄物の処分懇談会というのが4年前にできて、3年ほどかけて一応報告書を出したわけであります。その中で、ちょうどこちらにも来たんですが、全国で国民との意見交換会を開きました。西尾先生にも出ていただいたわけですが、ちょうど九州でやったときに、九州の長崎の方から私こういうことを言われたんです。原子力船「むつ」が放射線漏れ事故を起こして、佐世保で修理をしたことがあります。そのときに我々むつ市民といいましょうか、青森県民は、「もう帰ってくるな」ということでシュプレヒコールを上げて、気勢を上げたんですけれども、結局戻ってきたんです。その長崎の方から、「どうして我々は、青森県で起こした事故の後始末というものをつけなければ、責任を負わなければいけないのか」というようなことでありました。それを聞いて私は個人的には、青森県から高レベル放射性廃棄物よ出ていけと、どこかへ持っていって処分してもらいたいと、こういうことを言うのはもうやめようと、こういうふうに思いました。
この処分懇談会で検討したテーマというのは、どのような条件が整ったら、国民がこの問題にかかわりを持って、そして議論をしてもらえるのかというような視点から議論、検討をしてきたわけでありますけれども、なかなか、今先生方のお話を聞いても……
【福島瑞穂】
何て失礼な女だろうという感じですが、申しわけありません。実は選挙で、党には内緒でここに来ている……。
それはさておき、東京に戻らなくちゃいけないので、石橋さんのお話の途中に済みません。二つだけちょっと短く言わせてください。
例えば、イギリスのBNFL社のデータの捏造の問題に関して、全部、日本の通産省とか、資料を隠していたんですが、国会で質問があって、資料が出てきて、全部それが暴露されるという、MOX燃料についてBNFL社が捏造していたということなどが出てきたりしています。ですから、国会はくだらないところだけれども、情報公開などを極力やろうと思っているのと、それから今日カンプスさんが来てくださっているのは大変ありがたいんですが、例えばイギリスの労働党の国会議員でイギリスの原子力政策を変えようと努力している人などが日本に来て、日本で国会議員同士交流するとか、アメリカで、さっき言った安全行政と推進をどう分離するかという問題に関して、NGOの人たちと交流するとか、世界の中でこのプルトニウムの問題、原子力政策を、力を合わせて、NGOのレベルで、国会のレベルで政策を変えようという動きも大変始まっています。そういうときに、外国での情報公開が日本の国会の中で聞けるとか、非常にネットワークが広がっております。
だから、今日私が来たのも、ぜひいろんな国会の内外で、あるいはNGO間で、世界中でネットワークを強めて、やはり政策の転換をしていこうと思っております。
石橋さん、お話の途中で、しかも皆さん、途中で退席をする失礼をどうかどうか許してください。その分また頑張って働きますので、よろしくお願いします。どうもありがとうございます。(拍手)
【河合弘之】
福島さん、どうもありがとうございました。
石橋さん、途中で遮って申しわけありません。どうぞお話をお続けください。
【石橋忠雄】
いや、もう終わりなんですけれども、そういうことで、今福島先生が言われたような広範な形でこの議論というものが行われるということが今後とも、恐らく30年、50年の長いそういう期間、そういうスパンの中で必要になってくるんではないかなと思っております。
以上です。
【河合弘之】
どうもありがとうございました。
それでは、皆さん方に質問書、質問用紙が配られていると思いますが、今までの議論の中でわいた疑問等について質問状を書いていただければ幸いでございます。始まって1時間24分たちます。大変お疲れだと思いますので、ここで10分間の休憩をいたします。その後、今度はパネリストの間でディスカッションをし、また皆さん方の質問も取り入れていきたいと思います。 35分から再開いたします。よろしくお願いいたします。
休 憩
再 開
【河合弘之】
ご着席をお願いいたします。
初めにお断りしたいと思うんですが、今日のプレシンポジウムの勧誘のビラに、元動燃で地質問題、それから放射性廃棄物の問題について大変詳しい土井和巳さんという方にご出席願うというふうに書いてあったんですが、この方は急遽、世界中の高レベル放射性廃棄物の処分場候補地を見学して回る企画に入りまして、今世界中を見て回っているという状況でございます。その関係で出席いただけなくなりました。ただ、10月の本シンポジウムのときにはご出席をお願いすることになっておりますので、そのときをご期待いただきたいと思います。
それでは、パネルディスカッションを再開いたします。
初めに、西尾 漠さんの方から、この高レベル放射性廃棄物というのは、処分の責任はだれが持つべきなのかという基本的な問題について問題提起なり意見をお願いしたいと思います。西尾さん、お願いします。
【西尾 漠】
最初に言いましたように、そのことを今日は言いたいと思って、表をつくりました。お手元の資料の2枚目の方に、高レベル放射性廃棄物発生者、処分実施主体、国の役割という表をつくってみました。つくってみて、改めて、本当にその責任の所在というのが明らかになっていないと思いました。
一応その三つに主体を分けています。発電用の原子炉設置者、これが法律の表現ですけれども、実際には電力会社と「ふげん」、「もんじゅ」を持っている核燃料サイクル開発機構がこの発電用原子炉設置者ということになります。それから、原子力発電環境整備機構というのが、今回新しくつくられようとしている、今年中に、もう既に7月の頭ぐらいには準備組織ができると言われていますけれども、処分の実施主体と言われている部分です。それからさらに国ということになるわけです。
例えば、先ほど話があったアメリカの核廃棄物政策法なんかですと、安全の確保ということと、それから国その他の責任の所在を明らかにするということが法律の目的にうたわれているわけですけれども、この場合にはそうは全然なっていない。特に処分の実施主体をつくるということは、逆にいえば、そこにおいてどういうふうに責任を分担させるのかということが問題になると思うんですけれども、結果的にはわけのわからない形になっているというのをその表で示しました。
上からざっと見ていきますと、事業の計画についていいますと、これは国の方が基本方針、それから最終処分計画というものを策定して、公表します。それから、原子力発電環境整備機構では実施計画というものを作成するということが書いてありますけれども、これは通産大臣の承認が要ります。ただし、これを公表しますというふうには法律には書いてない。別の条文の中で「機構は、適切な情報の公開をしなくちゃいけない」ということが書いてありますし、普通に考えれば、公表するとは思いますけれども、法律には明記されていないということです。そうした計画に沿って、実際に調査地区とか処分場、候補地を選んでいくわけですけれども、これはだれが選ぶのかということがもう一つよくわからないんです。原子力発電環境整備機構が選定をするというふうになっていますけれども、じゃ、国はどうするのか。この法律を読むと、一つは、実施計画で選定をする。それについては、国が承認をするというふうになっています。ですので、先ほど見ていただいたスケジュール表の方には、ここに「国による確認」と書いてあるんですが、この「確認」は、法律の表現に従って「国の承認」というふうに今新しいものでは直っています。いずれにしても、国は承認をするんだというのが原子力安全委員会の部会の考え方です。法律にもそういう書き方をしてあります。
ところがもう一方、同じ法律の中に、「通商産業大臣は、調査地区等の所在地区を定めようとするときは」云々というふうに「定める」という表現が使ってあります。国会の答弁の中でも通産大臣は、「これは自分が決定するんだ」という表現を使っている。その辺も非常におかしいんですけれども、そうすると、じゃ、選ぶことの責任は一体どっちが持つのか。逆に言うと、選ぶことにどれほど国が関与してくるのかということにもかかってくる、その辺が非常に不明確という気がします。
それから、技術開発について、これは法律には何も書いてないわけですけれども、その法律のもとになった、もともとは石橋先生が入っている処分懇談会、さらに総合エネルギー調査会原子力部会というふうに、だんだんに法律に近づいてくるに従って、むしろいろんなことがわからなくなっているような気がします。その原子力部会の報告書の中では、処分の実施技術については、原子力発電環境整備機構、つまり実施主体の開発を支援するというような表現があるわけですけれども、実際に行われているのは、まさに核燃料サイクル開発機構、つまり発電用原子炉設置者そのものが、処分の実施技術も、それから安全規制の技術も、どちらも開発している。処分の実施技術を行う、それは本来だったらば、まさに処分の実施主体が行うべきことだと思うんですけれども、それを核燃料サイクル開発機構という国の機関がやっている。自身は、発電用原子炉設置者、つまり廃棄物の発生者でもあるということになります。 一番おかしなのは、安全規制にかかわる技術開発をそこがやっている、つまり廃棄物の発生責任者が安全規制のための技術開発をやっているという非常におかしな形になっている。それについてこの法律では何も書いてないということなんです。
それから、安全管理の責任をだれがどこまで持つのかということについて言うと、発生責任者である電力会社等は、廃棄物を搬入するまでというふうに原子力部会の報告書には書いてあります。法律には全く何にも書いていない。もちろん、事業が終わるまでの間、原子力発電環境整備機構−処分の実施主体が責任を持つことになっているわけですけれども、じゃ、その事業が終了した後はどうなるのか。
「事業を終了した後は、国が責任を継承する」というふうに原子力部会は言っています。しかし、安全の責任を継承するということは、何らかの安全の管理が必要だということになるわけですから、それを国がかわってやるということは、そもそもおかしいというふうに思います。最後まで責任は実施主体であって、安全規制は国がやるというのが本来の正しいあり方だと思いますけれども、この今の形だと、事業が終わるまでは実施主体が実施をして、国が安全規制をする。ところが、事業が終了した途端に、安全規制をしていた国が事業そのものまで行うことになってしまうという、非常におかしな形になっているということがあります。
しかも、「何らかの形で業務が困難な場合には、その全部または一部を国が継承する」ということが書かれている。そのときには、慌てて法律をつくって、その法律に従ってやりますということになっていますけれども、いずれにしても、放射性廃棄物そのものの発生者である電力会社、核燃料サイクル開発機構の責任どころか、処分の実施主体の責任というのも非常に小さなものにしかなっていないということがあります。
それから、施設の閉鎖の記録は、機構がつくって、それを国が永久保存するということになっています。
さらにわからないことだらけなのが、費用の拠出責任。これは、一応電気事業者が、つまり発生責任者が電気料金に転嫁します。いずれにしても、費用を負担するという形で、これが唯一の責任のとり方なんです。しかし、これがどれだけの範囲をやるのかというと、基本的には事業の終了までですね。終了した後については、全く何にもわからない。
それから、事業終了の前の段階ですけれども、いわゆる地域共生費というふうに言っています。まあ、地元にお金を落とす。そのお金については、国が財政的な支援をするという言い方はしてある。逆に言うと、電力会社はどこまで責任を持つか、非常にはっきりしないということになります。さらに、業務困難な場合には、その全部または一部を国が継承していくということ。
そういう意味で、本来責任を持つべき発生者である電力会社の責任を非常に小さくしているというのがこの法律であるわけです。しかも、そのことがはっきりわからない形になっているということが大きな問題だと思います。
それから、いざというときの損害賠償の責任ですけれども、これは、今現在の原賠法−原子力損害賠償法の普通の考え方に沿うと、原子力発電環境整備機構が責任を負うことになると思います。しかし、それはおかしいのであって、少なくともある程度は発生者である電力会社に負わせるべきだという意見が、例えば電力中央研究所みたいな電力会社の機関からも出ているということが一方であって、もう一方では逆に、こういった賠償責任が出るような場合というのは、結局業務困難な場合、非常事態になっちゃうから、実は国がそれをカバーするという話にもなりかねない。そういうことも含めて、そういう責任問題が非常にあいまいになっているということが、この法律の大きな問題点だというふうに思いました。
これは、石橋さんが最初にかかわった処分懇談会からすれば、大きな後退という気もするんですが、その辺について、できれば石橋さんの方からもコメントをいただければありがたいと思います。
【河合弘之】
石橋さん、今の点について何かコメントはありますか。お願いします。
【石橋忠雄】
私の理解の仕方が十分でないかもしれませんけれども、この責任が不明確であるということについては、少し分けて考える必要があると思います。
最終処分の実施主体をどこにすべきか、あるいはだれが責任を負うべきかという問題が一つあると思います。その点では、これは一応今のこの法律は、処分懇の報告を受けて、民間が責任を負うということに、これははっきりなっています。ただ、西尾さんの言われるのは、あるいは民間が主体となってこの処分事業を進める、あるいは最終処分地を決定するということが問題である、こういうことであれば話は別だと思います。私自身は、処分懇あるいはその他の場でも、この件については、アメリカあるいはフランスの制度と同じように、国が最終責任を負うべきであるというように考えております。
それと、これと関連する問題なんですが、安全基準についても不明確である。先ほど福島さんのお話にも、その点が国会でも問題になった、こういうお話があったわけです。この点は大きい問題といいましょうか、午後からのいろんなプレゼンテーションを聞いても、私は若干違う考え方を持っております。これは、地下研究施設のあり方というもの、あるいは地層処分是か非かという大きいテーマと直結する問題であると思います。あるいは、もっと、私は科学者でも、あるいは哲学者でもないので、わからないんですけれども、個人的な感想を言いますと、この今の我々が享受している科学とか技術、そういうものを背景とした社会というもののあり方にも関連すると思います。現在我々が直面している高レベル廃棄物というのは、全く未知の問題、経験したことのない問題なわけであります。したがって、安全基準といえども、たくさんの学者や研究者がいろいろ研究発表されております。しかし、それとて、明日になってみれば、これはどういうものになるかわからないです。そうすると、地層処分是か非かという問題はさておいて、一応地下研究施設をつくって、この問題についての研究をするということについては、私は必要だと思います。それはつまり、現在未知のものについての人間の英知を結集して、そして安全という目標に向けて何らかの答えを出していかざるを得ないという、こういう状況にあるかと思います。それが、安全基準を現在ここではっきりさせなければ前に進めないということであれば、私は物事というのは前になかなか進まないんじゃないかなと、こういうふうに思います。
【河合弘之】
ありがとうございました。
大分根本的な問題になってきたので、果たして高レベル放射性廃棄物というのは、安全に地層処分ができるのかどうか。要するに、地層処分をすれば安全なのか、今日のタイトルそのものについて、栗山さん、どうですか。いろいろ勉強されて、超深層地に処分をすれば安全なのかどうか、その辺について、わからないなら「わからない」、わかるなら「わかる」と、ちょっとお答えいただきたいんですが。
【栗山 知】
極めて大きな問題を振られてしまいましたけれども、その辺については、結局まだ世界中どこでも結論がいないだろうと思いますが、特にこの日本においては地震が多い、また地下水が多い、地殻変動地帯であるということで、地層処分する場所があるのだろうか、日本でできるのだろうか、それが根本的な疑問としてあります。
今回成立しました法律の一番の問題点というか、いろんな問題点が指摘されているんですけれども、私は、そういった点についてほとんど議論もされずに地層処分というのがそれで選択されてしまった、そういうことが一番の大きな問題だろうと思います。
そうすると、日本においてどこかに処分場を選択しなきゃいけない、そういうことになります。そうすると、この日本の中で探していくことになるんですが、先ほどネバダの報告でもありましたように、一つの犠牲となる地というか、そこを見つけていかなければいけない。
その押しつけ合いになってしまうんではないか、そういう目に見えるところで行われるか、それとも目に見えないところで行われるかわかりませんが、そういった押しつけ合いといいますか、処分地の探し合い、ごみを押しつけ合うというようなことが行われていく、そういった状況はやっぱりやめさせなきゃいけない、止めなきゃいけない。そのために、やはり地層処分自体をもう1度きちんと根本的に検討し直す、そういうことをきちんとし直さなきゃいけないんじゃないだろうかと私は思います。
【河合弘之】
西尾さんに聞きたいんですけれども、世界中のどこかで、高レベル放射性廃棄物をきちんと処分した実績−要するに完全に埋めたとか、埋めて完全に安全な状態にした、そういう実例はあるんですか。
【西尾 漠】
そういう実例はないですね。最終的に処分地を完全に決めたという国自体、まだない。ほとんど決まりかけているみたいなところはあるにしても……。
【河合弘之】
でも、とにかく原発を毎日毎日、例えば日本でもアメリカでもやっているわけですよね。もう高レベル放射性廃棄物、もしくは再処理した高レベル放射性廃棄物、もしくは使用済み燃料−アメリカなんかはそれ自体を高レベル放射性廃棄物と呼んでいるわけですが、それが地球上にたまっていることは事実ですよね。これはほうっておくわけにいかないでしょう。幾ら地層処分が危ないからとか何とかいっても。これはどうすべきなんですか。これからつくるのはやめようということをまず言わなきゃいけないけれども、それにしても、もう既にできてしまっている部分はどうしたらいいんですか。それについて、長い間この運動に携わっている西尾さんとしてはどう思われますか。
【西尾 漠】
基本的にそれは、容易に回収が可能な形で管理を続けていくしかないだろうと思っています。
【河合弘之】
それじゃ問題解決しないじゃないですか。
【西尾 漠】 もともと地層処分ということを考えた考え方というのは、地下深いところに埋めてしまえば、後の人たちは全く何もしなくて済む。ですから、後の世代に何の負担も与えないというので、地層処分というのはもともとはスタートしたわけですけれども、現実にはそうはならないかもしれない。後の人たちに、実は何らかの形で回収が必要になってくるかもしれない、そういったことも含めて、あるいは何かとんでもない、まさに不測の事態が起こるかもしれないということを考えて、じゃ、深層処分をしても、回収が可能なようにできるんじゃないかみたいな議論が今盛んに行われてきているわけですけれども、そうなってくるとすれば、そもそも深地層である必然性というのはほとんどない。むしろ、いざというときに一番回収が可能な形で管理をしていく。それは、ある意味で言うと、後の世代に負担をまさに押しつけざるを得ないわけですけれども、押しつけないよというふうに言って地下に埋めておいて、実は後になってとんでもない負担がかかるよりも、きちんとした形で負担をしてもらう、引き受けてもらう。もし引き受けてもらうんだとすれば、そのときにどういう形で管理をしていくのが一番いいのかというのは、私たちの世代の責任としてきちんとした管理の方法を研究開発する。それから、おっしゃられたように、後に残す放射性廃棄物の量を少しでも少なくする。さらに、これは福島さんが言われたことに関係して、後の世代にどうしても放射性廃棄物を残さなくちゃいけないんだとしたら、少なくとも後の世代が原子力に頼るとか、あるいは化石燃料に頼らなくてもきちんとやっていけるようなものを我々の世代が今から準備していく、そういったことを含めてお願いをするしかほかないだろうと思います。
【河合弘之】
石橋さん、とにかくどう言おうと、高レベル放射性廃棄物や使用済み燃料がたまってきているわけですね。じゃ、これをどうすればいいんだと。深地層処分が非常に危険だとか、いろんなことを言われているとすれば、どうすればいいんだという素朴な質問が寄せられているんですけれども、それについては石橋さん、今の西尾さんと同じ質問になるんですが、どう思われますか。
【石橋忠雄】
素朴でありますけれども、一番重要なテーマだと思います。私は、ここにこういう表題が掲げてありますけれども、安全に地層処分できるかという、こういうテーマそのものについても疑問を持っております。
その前に、今西尾さんの方から、後世代というようなご指摘もありましたけれども、我々ができ得る範囲のものを何かしなくちゃならないと思います。しかし、後世代の人たちのいろんな利益というものも、これは考えておかなければいけないと思います。そういう意味では、この法律にあるように、今ここで地層処分をしなければいけない、こういう考え方とか、あるいは地層処分が現時点で安全かどうかというような、こういう議論というのは、余り重要でないと思います。問題は、そのために何をなし得るかというようなことだと思います。 ということで、幾つかの現時点で考えられる選択肢というのをここで我々が検討する。その一つが地下研究施設だと思います。しかし、この地下研究施設の最大の問題点、つまり言葉をかえて言うと、地層処分の最大の問題というのは、地下研究施設に入ることができるかどうかという問題であると思うんです。地下研究施設の問題というのは、やはりそれが最終処分場になるんではないか、こういう不安とか懸念だと思います。先ほどカンプスさんが言われたように、この問題というのは、科学技術の問題もありますけれども、もっと現実に出てきている問題は、やはり政治的な問題、社会的な問題、そういうものが大きな障害になっているわけです。したがって、その社会的な障害というものを除去するためにはどういう手だてがあるのかということだと思います。私が具体的に言いますと、地下研究施設というのも必要だと思います。しかし、そのためにはやはり、最終処分場との分離を制度的に保障する、こういう今質問も出てきておりますけれども、その問題にもなります。そういうことが必要だと思います。これは現実には、フランスの法律がそういう幾つかの困難を乗り越えて、そういう法律をつくってきているわけです。
最終的に、国民の代表の国会が、どういう処分方法、あるいは管理方法をするのかということを決定するということになっているわけでありますけれども、その一つが、そういう地下研究施設の完全な独立分離ということを制度的に保障するということ、それからさらに、先ほども言いましたように、現時点で考えられている地上管理のあり方、あるいは消滅とか分離の方法というものを科学的にさらに進めていって、次世代にその結果を残していく、こういうことも必要になってくると思っております。
【河合弘之】
ありがとうございます。
西尾さんの見解と石橋さんの見解、微妙に違うことはおわかりだと思います。西尾さんからさらにもう1回コメントをお願いいたします。
【西尾 漠】
後で時間切れになってしまうといけないので、一つ手前の話から、反論というか、違うところを言っておきます。
一つは、国が最終的な責任を持つべきだと石橋さん言われたわけですけれども、私はやはり、本来は発生者が責任を持つべきであって、その安全の規制をきちんと国が責任を持つ。その意味では、最終的に放射能の災害を起こさないという意味で、それが最終責任ということであれば、確かに国かもしれないけれども、そういう言い方をすることによって、むしろ発生者責任がぼやかされてしまっては困るというのが言いたいことです。特にこれは、電力会社自身が、これは東京電力の前の社長の荒木さんが、「国の政策で原子力をやっているんだから、廃棄物は国が面倒を見てほしい」ということを平気で言っているわけですね。そういう考え方がある以上、「最終責任は国だ」と言ったときに、そういうふうに電力会社の責任がどこかへ行ってしまうようなことにイコールになってしまっては困るという気がしますので、あくまで国の最終責任というのは安全規制の責任だといいたいということが一つです。
それから、安全基準について、確かに現実にさまざまな知見がつけ加わっていく中で基準が変わっていくということはあり得ると思います。だけども、だから最初の段階では何にもなくていいという話はやっぱりおかしいだろう。少なくとも、どういう形で安全を確保するのかという基本的な考え方はあらかじめあって、処分の候補地を選ぶんだったら、まさに候補地になり得るところを選ばなくちゃいけないわけですから、だとすれば、どういう要件が必要なのかということは、やはりそれは後でいいという話にはならないだろうと思います。 それから最後に、地下の研究施設の話なんですけれども、地下研究施設の問題というのは、確かにそれが最終処分場につながるかもしれないというおそれがあるという問題はあって、それについてどういうふうに歯どめをかけるかということを今石橋さんは話されたんですけれども、もっと、もともと基本的な考え方からすれば、その研究というのをだれが何のためにやるのがということを抜きにしては、処分場になるかならないかだけを言うのはおかしいと思います。まさに今現在やろうとしているのは、核燃料サイクル開発機構という放射性廃棄物の発生者自身である。そこが安全規制も含めた研究開発をやろうとしていること自体が全くおかしいわけで、「だれが」というときに、核燃料サイクル開発機構がそういう研究開発をする、しかもそれを国民の税金を使ってやるのは全くおかしい。
じゃ、研究の中身としてはどうなのか、そこが一番はっきりしなくてはいけないにもかかわらず、今まさに瑞浪の深地層の研究所にしても、どういうことを実際にやるのか、何のためにやるのかということを、むしろほとんど隠すような形でしか進んできていない。むしろ、どういう研究が本当に必要なのかということをはっきりさせるところからスタートするべきだと思います。私自身は、これは石橋さんが最後に言われたように、必ずしも地層処分だけじゃなくて、ほかのことも含めてきちんとした、どういう形で後の世代に廃棄物を管理してもらうのか、そのためにどういうことが必要なのかというところから出発をするべきだと思います。その場合には、地下研究施設というふうに、いきなり地下というふうにいくのはどうかなと思います。
【河合弘之】
この議論は、これをやっていると、これだけで尽きませんので、今度はいきなり具体的な、東濃の問題に入ります。皆さんから、整理に困るぐらいの質問が来ています。それをできるだけ多く取り上げ