岐阜地域司法計画(骨子)
 
2003年2月           〒500-8811 岐阜市端詰町22番地 岐阜県弁護士会
                      TEL 058(265)0020  FAX 058(265)4100
1 岐阜地域司法計画とは?
 (1) 司法制度改革審議会は,その最終意見書の中で,次の3点を基本的な方針として,
  司法制度の機能を充実強化すべきであると提案しました。
   第1 司法制度をより利用しやすく,分かりやすく,頼りがいのあるものとする。
   第2 質量ともに豊かなプロフェッションとしての法曹を確保する。
   第3 国民が訴訟手続に参加する制度の導入等により司法に対する国民の信頼を高
     める。
   そして,この最終意見書を最大限に尊重するとの閣議決定もなされ,司法制度改革
  を実現するための具体的な立法作業が進んでいます。
 (2) 岐阜県弁護士会では,新しい司法制度に地方の声を反映させるために,『司法統計
  年報』や岐阜県内の全地方議会の議員に対するアンケートの結果などを利用して,岐
  阜県における司法の実情を調査しました。そして,岐阜県の実情にかなった司法制度
  改革に対する提言をすべく,約2年前から『岐阜地域司法計画』の策定を開始し,
  2001年10月には,岐阜市民会館において,その第1次案を発表いたしました。その後,
  市民のみなさまからお寄せ頂いたご意見もふまえて改訂作業を進め,今般,『岐阜地
  域司法計画』が完成しました。
   以下に,『岐阜地域司法計画』の骨子をご紹介します。
 
2 少なすぎる裁判官
 (1) 法律関係が錯綜する今日,国民は,裁判所が法的紛争の適正・迅速な解決というサ
  ービスを提供してくれることに大きな期待を抱いています。
   しかし,残念ながら,裁判所における紛争解決に長期間を費やしていることは,国
  民の共通した認識ともなっており,国民が裁判所を利用することを躊躇させる大きな
  原因となっています。
 (2) 裁判が長期化するのは,裁判所に持ち込まれる事件数に応じた裁判官の人数が配置
  されていないことも1つの原因と思われます。
   次のグラフは,1989年から2001年までの間に,岐阜地方裁判所(本庁及び各支部)
  が受け付けた民事通常事件・破産事件・刑事事件の事件数と,岐阜地・家裁及び簡裁
  の裁判官数(岐阜地家裁所長を含む)の推移を表したものです。民事通常事件や破産
  事件の数が相当な増加傾向にあり,刑事事件がここ数年増加傾向にあるにもかかわら
  ず,岐阜地・家裁及び簡裁の合計裁判官数は余り変わっていないことがわかります。
 
岐阜地域司法計画(骨子)
 
 (3) もとより,この人数でも,裁判官がゆとりをもって事件に取り組むことができれば
  問題はありません。
   しかし,現実には,事件数が多すぎて裁判の期日と期日の間が長くなってしまった
  り(時に数か月ということもあります),1回の裁判に割かれる時間が極めて短時間
  に制限されたり,判決期日が定められても延期されることが多いことも事実です。
   アンケートの結果でも,岐阜県内の裁判官数につき,多いという回答は 0.8%であ
  り,極めて少ないあるいは少ないとの回答は61.6%でしたし,「手続に費やす期間が
  長すぎる」,「1期日における進捗感がなく,面倒になって途中で取り下げたくなっ
  た」など,実態を知って司法の無力さに直面した回答者からの指摘もありました。
   やはり,事件数と比較すると岐阜県内の裁判官数は少なすぎると思われます。
 (4) それでは,岐阜県内には,何人程度の裁判官が必要なのでしょうか。
   岐阜県弁護士会では,さまざまなデータを基にして,それぞれの裁判官がゆとりを
  もって事件に取り組むことができる執務時間を年間1540時間とし,それぞれの事件が
  終了するのに要する時間をきめ細かく算定して(例えば民事通常事件では22時間,管
  財人選任の破産事件では4時間,単独否認の刑事事件では28時間など),岐阜地方裁
  判所(本庁及び各支部)の必要裁判官数をシミュレーションしてみました。
     民事事件                         (単位 人)
  本 庁 大 垣 高 山 多治見 御 嵩  合 計
民事通常   13    3    1    4    1    22
保  全    1            1
執  行    2            2
破  産    3    1    1    1    1    7
合  計   19    4    2    5    2    32
     刑事事件                         (単位 人)
  本 庁 大 垣 高 山 多治見 御 嵩  合 計
刑事訴訟   12    3    1    3    1    20
そ の 他    2            2
合  計   14    3    1    3    1    22
 
 (5) シミュレーションの結果によれば,岐阜地方裁判所(本庁・各支部)に必要な裁判
  官数は,民事事件担当32人,刑事事件担当22人の合計54人です。この数は,岐阜地方
  裁判所(本庁・各支部)の裁判官数の3倍強になります。
   司法予算規模の大幅な拡大という障壁をクリアする必要がありますが,岐阜県内の
  裁判官の増員は危急の課題であり,岐阜県弁護士会では,少なくとも早急に2倍増に
  なるように強く望んでいます。そのために,弁護士任官(弁護士が裁判官になること
  )を積極的に進めること,特に,短期(10年以内の任期),特定分野,非常勤の裁判
  官を採用することにより,多様な任官の道を広げることを実現したいと考えています。
 
3 裁判に必要な市民感覚
 (1) 法的紛争の解決には,複雑な社会経済に関する専門的知識や実務感覚,素朴な市民
  感覚などをフルに活用する必要がありますから,豊富な社会経験を有する有為の人材
  の中から裁判官を選任する制度が望ましいと考えられます。
   アンケートでも,「裁判官になるには一定期間民間などでの研修を要すべき」,「 
 裁判官はもっと教養を身につけるべき」などの指摘がありました。
   既にアメリカやイギリスなどでは,裁判官以外の法律職務に相当期間従事した実績
  がある弁護士等の中から民主的に裁判官を任命する制度(法曹一元制度)が採用され
  ていますが,司法制度改革審議会も,弁護士が裁判官になる途を大きく開くなど,法
  曹一元制度の採用に向けて第一歩を踏み出しました。
 (2) さらに,裁判に市民感覚を反映させる手段として,司法制度改革審議会は,刑事手
  続において国民の中から無作為に選ばれた裁判員が裁判官とともに評議して,有罪・
  無罪の決定や量刑を行う制度を提案しています。
   日弁連は,裁判員制度を実施する場合には,1事件について裁判官の3倍以上の裁
  判員を配置すべきであると主張しています。具体的には,裁判官2人,裁判員9人の
  11人で裁判を行うことを想定しています。従って,岐阜県では,この制度の対象とな
  る合議事件数が年間約75件とすれば,約 675人が裁判員を経験することになります。
  岐阜県弁護士会は,この日弁連案に沿った立法がなされるよう努力したいと考えてい
  ます。
 
4 岐阜県の弁護士像とその将来
 (1) 岐阜県弁護士会に所属する弁護士は,2003年2月1日現在,91名です。
   岐阜県内の弁護士1人当たりの人口は23,161人であり,本庁及び各支部の管轄ごと
  の弁護士数と弁護士1人当たりの人口は,次の表のとおりです(人口は2000年国勢調
  査によります)。
   弁護士1人当たりの人口を考えても岐阜県の弁護士の人数が少なすぎると思われま
  すし,都市部への集中という弁護士偏在の傾向も顕著です。
  本  庁 大垣支部 高山支部 多治見支部  御嵩支部
弁護士数    71人    8人    4人     7人     1人
弁護士1人当たりの人口 13,661人
 
56,233人
 
42,424人
 
 51,651人
 
 222,008人
 
 
 (2) また,アンケートでは,どこにどのような弁護士がいるのか,弁護士報酬がどれく
  らいか,などの情報が不足しているために,気軽に弁護士に相談できないという意見
  が目立ちました。依然として弁護士の「敷居が高い」という旧来の弁護士像のままで
  あることは,残念です。
 (3) そこで,弁護士に関する情報を開示してアクセスを少しでも容易にするために,20
  00年10月,弁護士広告を原則自由化しました。また,岐阜県弁護士会では,その活動
  内容を広く知っていただくために,ホームページ(URL http://www.gifuben.org/)
  を設けています。
 (4) さらに,岐阜県弁護士会では,弁護士会館で毎日法律相談を受け付けているほか,
  美濃加茂(1998年),八幡(1999年),中津川(2000年),大垣(2001年),高山( 
 2002年),多治見(2003年)に法律相談センターを設置・運営しています。また,大 
 垣法律相談センターでは,JR大垣駅の駅ビル内に相談室を設け,相談時間も午後6 
 時から午後8時までとするなど,相談者が帰宅途中に相談に来られるようにしていま 
 す。高山法律相談センターでも,相談時間を午後5時30分から午後7時30分までの夜 
 間に設定しています。
 (5) ところで,我が国の現在の法曹人口は約2万人ですが,司法制度改革審議会の最終
  意見書によると,2018年ころまでには法曹人口を約5万人に,即ち,今後15年間に法
  曹人口を約 2.5倍に増加させることにしています。
   岐阜県弁護士会においても,弁護士数が 200人を超えることになり,市民のアクセ
  スや需要に一層応じられるようにします。また,県内における弁護士過疎地を解消す
  るために,公設事務所(弁護士会が設置して弁護士を常駐させる法律事務所)を開設
  する努力をします。
 
5 最後に
  岐阜県弁護士会でも,この『岐阜地域司法計画』の骨子を土台として,岐阜県内の市
 民のみなさんや各界の方々と,岐阜県の司法の将来はどうあるべきか,一緒に議論した
 いと考えています。ご意見があれば,ファックスにて岐阜県弁護士会事務局へお寄せ下
 さい。