岐阜地域司法計画
2003年 3月
5日
岐 阜 県 弁
護 士 会
・・・・岐阜地域司法計画の発表にあたって・・・・
岐阜県民の皆さん,県内各自治体及び関係機関の皆さん,日頃より岐阜県弁護士会及び同会所属弁護士の活動にご協力をいただき,誠に有難うございます。
さて,今までの司法は,市民にとって利用し易かったと言えるのか。21世紀の司法はどうあるべきなのか。2001年6月21日に発表された司法制度改革審議会「最終意見書」においては,「市民のための司法」を早急に実現すべきとの提言がなされております。 これを受けて2001年12月内閣に司法制度改革推進本部が設置され,2002年3月から10(後に11)の検討会で具体的な改革案が検討され始めました。既に,法科大学院に関する法律は制定され,裁判員制度についての公聴会も行われました。今後も,法曹養成,法曹資格,公的弁護,人事訴訟など急ピッチで進められています。さらには,裁判迅速化に関する法律も制定されようとしています。今通常国会以降,立法化が矢継ぎ早になされていくものと思われます。
ところで,司法を利用する環境は地域によって大きく異なりますので,真に市民のための司法改革を実現するためには,各地方の実情に沿った市民の声を反映することが不可欠です。そこで,岐阜県弁護士会においても,2001年10月27日,「あなたがつくる21世紀の司法」と題する市民集会を開催し,中坊公平弁護士による妥協を許さない司法改革実現の必要性についての講演の熱気さめやらぬなか,岐阜における司法改革のたたき台とすべく「岐阜地域司法計画第1次案」を発表しました。
第1次案作成に際しては,岐阜県内の市町村議員全員に対する司法改革アンケート結果や司法統計などの資料を参考にしましたが,その後,第1次案をお読みいただいた多くの市民の声に接したり,司法行政情報開示請求の制度を利用して裁判所から詳細なデータの提供を受けるなどして資料収集に努め,従来のデータも最新化したうえで,司法改革の進捗状況に合わせ,このたび,「岐阜地域司法計画」として発表する運びとなりました。
より具体的な岐阜の司法を浮かび上がらせることができたと考えております。しかし,司法改革は今なお実現途中であって完成していません。真に市民のための司法改革が実現するためには,市民の目線で司法改革過程を監視するなど,市民の意見を反映させるための不断の努力が必要です。岐阜県弁護士会では,今後も,岐阜地域司法計画が夢幻の計画で終わらせないために議論を尽くし,司法改革に市民からの貴重なご意見を反映させたいと存じます。
岐阜県弁護士会 会長 河 合 良 房
岐阜地域司法計画
目 次
1 岐阜地域司法計画の意義・目的 1
(1) はじめに−市民の司法をめざして 1
(2) 岐阜の司法の実情と改革の方向 4
(3) 岐阜地域の実情の実証的検討の必要性 5
(4) 岐阜地域司法計画の活用方法 5
2 岐阜の地域別人口の推移と経済・社会の特性 7
(1) 岐阜の特性 7
(2) 県下の各地域と経済社会の特性 8
(3) 岐阜の交通 9
3 岐阜の司法の推移と現状 10
(1) 裁判所における事件数と裁判官の人数について 10
(2) 裁判所における事件数と弁護士数について 14
(3) 裁判外紛争解決手段(ADR)の充実
−紛争の早期・円満解決のために 15
4 岐阜における司法の問題点 18
(1) 裁判所・裁判官の繁忙 18
(2) 裁判所(あるいは合議部)の偏在・支部問題 20
(3) 市民感覚から乖離した裁判官の態度・判断 20
(4) ハード面の充実・裁判所と関連施設の不備 21
(5) 市民から見た岐阜の弁護士像 22
5 岐阜における司法改革 24
(1) 裁判所の人的・物的拡充−裁判を受ける権利の実質化 24
(2) 事件数から推測される県下に必要な裁判官数等 27
(3) 必要検察官数 36
(4) 法科大学校 37
(5) 裁判外紛争解決手段(ADR)の将来 38
(6) 地方自治体との協力 39
6 岐阜における「市民の司法参加」 42
(1) 「市民の司法参加」 42
(2) 法曹一元制度 42
(3) 陪・参審制 44
7 岐阜県弁護士会の将来 46
(1) 弁護士へのアクセス障害 46
(2) 弁護士へのアクセス改善方策 48
(3) 岐阜県弁護士会の将来−弁護士人口増加・法人化・広告自由化 52
|
|
1 岐阜地域司法計画の意義・目的 −岐阜地域司法計画でめざすもの−
| |
1 市民の司法
(1)
我が国の司法制度は,明治以来,中央集権的な少数の官僚裁判官によって担われてきた。戦後の改革によっても,司法官僚制は基本的に維持され,裁判官(判事)は,ほぼ判事補から選任され,その判事補は司法試験後の司法研修所におけるいわゆる「逆肩叩き」によって採用されている。
「官僚司法」の最大の問題点として,裁判所が国家の権力行使に対する抑制機能を著しく低下させていることを指摘することができる。
具体的には,第一に,裁判所が憲法によって与えられた違憲立法審査権の行使に極めて消極的であること,第二に,国や行政を被告とする訴訟において,裁判が行政追随傾向を強め,国民が訴訟で救済を受けることが極めて困難となっていること,第三に,刑事裁判が捜査の追認の場と言ってよいほど形骸化していることを指摘することができる。
その原因として,裁判官の独立が脅かされていることが指摘されている。
(2)
同時に,現在の司法の問題として,司法を担当する裁判官,弁護士等の法曹の数も少なく,司法予算も少ない,司法容量の小さい政策が取られていることである。司法は,市民からは遠く,頼りがいのない存在と見られてきた。
「市民の司法を担う裁判官は,人権感覚を身につけ,司法の救済を求める人々とともに裁かれる立場から幅広い経験を積んできた人から選ばれる必要があります。また,市民も参加する民主的選考手続を経た人が任命される制度にするべきです。さらに,昇任・昇給など官僚的な人事制度を伴わないものでなければなりません。このようにして,弱者に優しい心と権力にたじろがない勇気をもった裁判官を実現することが,私たちが求める法曹一元制度です。」(日弁連・司法改革に関する宣言−「市民の司法」の実現を目指して−2000年5月26日)。
このように,一定期間市民的経験を積んだ法曹から裁判官を選任する法曹一元制度と,市民の手によって裁判の事実認定を行う陪審制度の実現が不可欠である。このことによって,「官僚司法」から「市民の司法」に確実に転換することができる。
ところで,「市民の司法」では,地域の市民自らが担い手となることが必要であり,地域に根ざした司法を築くことになる。中央集権から地方分権に移行しようとする現在の社会の動きと一致するものである。
2 司法制度改革審議会の最終意見書
(1)
このような社会の動向を反映して,内閣に1999年7月に設置された司法制度改革審議会は,2001年6月12日に最終意見書「21世紀の日本を支える司法制度」を発表した。
この意見書においては,21世紀の日本社会を展望して,司法改革の三つの柱を提言している。
第一 「国民の期待に応える司法制度」とするため,司法制度をより利用しやすく,分かりやすく,頼りがいのあるものとする(司法基盤の整備)
第二 「司法制度を支える法曹の在り方」を改革し,質量ともに豊かなプロフェッションとしての法曹を確保する(人的基盤の拡充)
第三 「国民的基盤の確立」のために,国民が訴訟手続に参加する制度の導入等により司法に対する国民の信頼を高める(国民の司法参加)
現在,この意見書を最大限に尊重するとの閣議決定もなされ,司法制度改革を実現するための具体的な立法作業が始まっている。
(2)
この意見書は,次の点で評価できる。
第一に,人的基盤の拡充について,法曹の質と量の拡充を目指して,法曹人口の拡大,裁判所・検察庁の人的体制の充実,ならびに新しい時代にふさわしい法曹の質を確保するための法科大学院構想を提案したこと
第二に,国民の司法参加について,広く一般の国民が,裁判官とともに責任を分担しつつ協働し,刑事重大事件につき,裁判内容の決定に主体的,実質的に関与する新しい制度として「裁判員」制度を提言したこと
第三に,裁判官制度の改革について,弁護士任官制度の推進,判事補の相当長期の多様な法律専門家としての多職経験,特例判事補制度の計画的・段階的解消,裁判官の選考につき,国民も参加する推薦機関の設置,人事制度の非官僚化などを打ち出したこと
第四に,刑事被疑者に対する公的費用による弁護制度を創設したこと,民事法律扶助を拡大したこと
その反面,弁護士報酬の敗訴者負担制度を修正しながらも維持したこと,裁判の改善について,審理期間の半減を目指して「迅速化」が強調されているが,その前提となる証拠収集・証拠開示の充実策などの「適正化」の提案が不十分であること
など問題点が指摘されている。
3 司法制度改革推進本部
(1)
2001年11月,司法制度改革審議会の最終意見書を受けて「司法制度改革推進法」が成立した。そして,12月には,内閣に「司法制度改革推進本部」が設置され,今,「司法アクセス」「裁判員制度・刑事」「法曹養成」「法曹制度」など11の検討会で,急ピッチな検討・立法作業が進められている。まさに,今は,司法制度改革の正念場である。
(2)
現在までにも,多くのことが検討され,大筋の方向性が決まり,しかも既に立法化されたものもある。
@ 法曹人口の増大化に伴う,法曹養成の質的低下をさせないための法科大学院構想は,2002年11月司法試験法・学校教育法・裁判所法の改正,法科大学院基本法制定がなされ,2004年4月開校ということで実現した。しかし,法科大学院の適正配置,実務家教員の確保,奨学金制度の確立,予備試験(法科大学院を経ない法曹への途)の扱いなど,未だ解決しなければならない問題もある。
A 被疑者の公的弁護制度を2006年度には実施するということが確認されたものの,その運営主体をどうするか,弁護士の選任の適正をどう確保するか,財政的面での問題はないか,などを検討している。
B 弁護士制度に関しても,弁護士会会則の必要的記載事項から弁護士報酬規定を削除する,綱紀・懲戒制度に市民の意見を取り入れる制度を採用する,公務員との兼職をし易くする,などの決定がなされた。また,司法書士に簡易裁判所の訴訟代理権を付与することも決定された。他方,特任検事への弁護士資格付与,副検事・簡易裁判所判事への準弁護士資格付与,なども議論されているが,良質な司法サービスの提供などの点で問題がある。
C 裁判官制度に関しても,弁護士任官(弁護士が裁判官になること)を推進する制度を取り入れる,裁判官の任命に市民の声を反映させるなど人事制度を見直す,裁判官を増員する,などのことが決定されている。
D 裁判員制度は,一般国民が裁判官と共に刑事裁判の評決者となるものであり,国民の司法参加にとって大きな変革の契機となるものである。少なくとも,有権者から無差別抽出によって選出され,裁判官と共に評決権を有するものであり,国民が司法制度においても,主権者として積極的な行動ができる可能性がある。裁判員制度の具体的な形(裁判員の数や適用される刑事裁判)は今後の立法過程で決まることになるが,できる限り司法参加の実が挙げられるようなものにしていく必要がある。
E 一般的な弁護士報酬の敗訴者負担制度の導入も考えられているが,裁判は,訴訟提起前では勝つか負けるか判断しにくいものであり,この制度が導入されると,司法の利用はまた遠のくことになってしまう。これは司法制度改革が志向している「市民の司法へのアクセスの確保」に逆行することになり,弁護士会は強く反対している。
(3)
ところで,2002年秋頃から,裁判を2年以内に終了させることを原則とする裁判迅速化法案とか,全国各地に司法へのアクセスポイントを設けようというリーガルサービスセンター構想とかが浮上してきた。前者については,「迅速」と共に「裁判の充実」をもっと明確にすること,そのための設備の拡充や第三者機関による検証の実施などが必要である。後者については,その全容が明らかでないが,弁護士の独立性が侵害されないこと,これまで弁護士会が築いてきた法律相談センター・当番弁護士・法律扶助などが後退しないこと,財源を十分に確保することなどを訴えていくことが必要である。
(4)
いずれにしても,市民のための司法改革は未だ形成途上であるし,弁護士会には今まで以上の努力が求められている。
1 岐阜の裁判所と司法の実情
日本の司法の主要な問題である,司法容量が小さいことの弊害が岐阜県で顕著となっており,その改革が不可欠なものとなっている。
具体的には,裁判官の量的不足を直接的な原因として,民事裁判においては,判決の遅れが顕著であり,裁判官への加重負担も限界に達しようとしていること,刑事裁判においては,短すぎる審理,迅速のみに偏重した裁判が一般化しており,重大事件を扱う法定合議事件において一回結審が求められたこと,家事事件でも審判が遅れていること,支部の裁判官にあっては事件が多い上に他支部等への填補(出張)が多いなど,事件の加重負担があることなどである。
更に,岐阜県においては,貧弱な司法基盤も深刻であり,地裁支部や簡易裁判所の統廃合によって司法へのアクセスの障害が進行したこと,法廷へのエレベ−ターがなく,必要な調停室も不足するなど裁判所の施設も貧弱なままであること,少年鑑別所が県下に1施設しかないなど,拘置所等刑事拘禁施設の少ないことなどを指摘することができる。
その改革の主要な内容として裁判官の大幅増員を実現し,併せて裁判所職員の増加,司法基盤の拡大を図ること,司法容量の増大が県民の期待に最も沿うことになる。
このような立場から,岐阜県弁護士会において,2000年春に,裁判官2倍化を要望する決議を行っている。
2 弁護士の過疎・偏在問題
弁護士の過疎・偏在も重要な問題となっており,その結果,弁護士へのアクセスが困難となっている。
極端な事例では,支部の法律事務所によっては法律相談の予約が1か月先でないと入らない事態も生まれている。
弁護士へのアクセス障害の解決を目指して,既に積極的な取り組みが開始されている。具体的には,弁護士の業務広告の自由化が2000年10月1日から,法律事務所の法人化が2002年4月から,それぞれ実施されている。
当会でも,裁判所の支部管轄区域において,弁護士がゼロかあるいは1人しかいない地域,通称ゼロワン地域であった御嵩支部において,1998年,当会の最初の法律相談センターであるみのかも法律相談センターが設立された。その後,準ゼロワン地域であった八幡町に八幡法律相談センターが1999年に,中津川市に中津川法律相談センターが2002年に設立された。さらに,2001年に大垣法律相談センターを,2002年に高山法律相談センターを,2003年に多治見法律相談センターをそれぞれ開設した。これによって,地裁支部及び簡裁のある地域すべてに法律相談センターを有することとなった。全国でも先駆的な成果である。
以上の改革を実現していく上で,岐阜県における司法の実情などを実証的に検討して,地域改革の可能性を踏まえて,具体的な改革提言をする。
具体的には,2001年春に,岐阜県全地方議員を対象として,司法制度改革のアンケート(以下司法改革アンケートという)を実施した。このアンケートでは,約1500名の県会議員・市町村会議員全員に配布したところ,500名近い回答があった。
アンケート項目としては,@弁護士について,弁護士数・その配置・法律相談センターなどの設置の必要性,A裁判所について,裁判所の配置・裁判官の数,B司法改革について,裁判所の利用状況・法曹一元・裁判官推薦委員会・陪審制度,C法曹養成制度について,岐阜での開設の必要性・地方自治体の関与などである。
司法改革アンケートでは,地域の実情に基づく意見が出され,その意見を踏まえて,この地域司法計画を検討した。
本地域司法計画に基づき,法曹三者での内部的な検討に止まらず,岐阜県民特に経済界,労働界,各種団体との協議を行い,広い検討機会を持つ予定である。このことによって,地域住民に主体的に支えられた「市民の司法」の具体像が出来る。
岐阜県弁護士会としては,司法制度改革審議会最終意見書と同時にこの地域司法計画を県民の中で活用し,「21世紀の日本を支える司法制度」実現に向けて,努力する所存である。
1 日本の中の岐阜
(1)
岐阜県は,日本の国土のほぼ中央に位置し,日本の人口重心が岐阜県内にある。
愛知県,三重県とともに,「東海地方」あるいは「中京地方」と指称され,名古屋市を中心とした文化圏・生活圏に含まれる。
(2)
全国で数少ない内陸県で,北部と東部は山地で,南部は濃尾平野の一部である美濃平野があり,最南部は海抜0メートルの水郷地帯となっている。これらから岐阜県は「飛山濃水の地」とも呼ばれている。
(3)
また,岐阜県は,富山県,石川県,福井県,滋賀県,三重県,愛知県,長野県の7県と接している。
2 岐阜の面積
岐阜県の面積は約10.598kuで,全国の都道府県では7番目の広さである。
3 歴史の中の岐阜
東西交通の要所であると同時に,北陸方面への交通も至便であったことから,古来,要衝の地であった。
古くは「不破の関」が置かれ,壬申の乱の戦地でもある。戦国時代には,「美濃を制する者は天下を制する」と言われた如く,織田信長の天下統一の足がかりとなった。
天下分け目の合戦となった関ヶ原の戦いは,余りにも有名である。
4 岐阜の人口
岐阜県の人口は1945年に
151万人であった。その後平均して10年毎に10万人の人口増となったが,1999年の 211万人が頭打ちとなってその後はやや減少傾向となっている。
2002年(平成14年)11月1日現在の岐阜県の人口は 211万4114人である。
1 岐阜市(人口40万人)を中心とした周辺地域
(1) 県都で,行政や産業の中心であり,行政機関,司法機関などが集中している。
(2) 勤労者,商工業者なども多く,人口密度も高い。
(3) 繊維関連産業に従事する者も多く,不況に苦しんでいる。
(4) 柳ヶ瀬の盛り場を中心として,暴力団,外国人問題がある。
(5)
岐阜地方裁判所(本庁)が,岐阜市,各務原市,関市,羽島市,美濃市及び周辺郡部を管轄している。
2 大垣市(人口15万人)を中心とした周辺地域
(1) 繊維,機械製造,鉱業関連の大規模な企業が多く,人口移動が比較的多い。
(2) これら企業で働く外国人も多い。
(3) 岐阜地方裁判所大垣支部が,大垣市及び周辺郡部を管轄している。
3 多治見市(人口10万4000人)を中心とした周辺地域
(1) 陶器関連の土着型中小企業が多い。
(2) JR中央線及び中央高速道路という交通の利便さがある。
(3) 名古屋市に近いことから,可児市・多治見市などがベッドタウン化している。
(4)
岐阜地方裁判所多治見支部が,多治見市,土岐市,瑞浪市,恵那市,中津川市及び周辺郡部を管轄している。
4 高山市(人口6万6000人)を中心とした周辺地域
(1) 日本有数の観光都市であり,その関連産業に従事する者が多い。
(2) 山奥深くの地であり,人口移動は比較的少ない。
(3) 岐阜地方裁判所高山支部が,高山市及び周辺郡部を管轄している。
5 御嵩町(人口1万9000人)を中心とした周辺地域
(1) 旧中山道沿いであるが,殊更の産業もなく,人口減となっている。
(2) ただ,美濃加茂市は工業立地も進められている。
(3) 岐阜地方裁判所御嵩支部が,可児市,美濃加茂市及び周辺郡部を管轄している。
6 奥美濃地方を中心とした周辺地域
(1) 農林業中心であり,過疎化が進んでいる。
(2) 東海北陸自動車道の延長による活性化が期待されている。
(3) 1の岐阜地方裁判所(本庁)の管轄である。
7 その他山間部
(1) 農林業中心であるが,過疎化が進んでいる。
(2) 地方道路の整備が進んでいるが,司法へのアクセスは悪い。
1 公共交通機関
(1) JR −− 東海道本線,中央本線,高山本線,太多線
(2)
私鉄等 −− 名鉄(名古屋本線,各務原線,広見線,揖斐線,竹鼻線,美濃町線),
近鉄(揖斐線・養老線),長良川鉄道,樽見鉄道,明智鉄道
(3) バス
* 2001年9月30日をもって,名鉄の谷汲線(全線)・八百津線(全線)・揖斐線(黒野−本揖斐間)・竹鼻線(江吉良−大須間)が廃止された。2000年3月鉄道事業法が改正され,廃線に沿線自治体の同意が不要となったことから廃線されることになった。しかも,バス事業についても,2002年2月道路運送法が改正され,撤退・参入が自由化されることになっている。ますます地域の足が小さくなっていく。司法についての市民のアクセスもますます困難になっていく。
2 道路
(1) 高速道路 −− 名神,中央,東海北陸
(2) 国道 −− R21,R156(22),R41,R248,R157,・・
* 公共交通機関とは逆に,自動車道路網は広がっているし,自動車台数も多くなっている。しかし,高齢者にとっては利用困難な手段と言わざるを得ない。
1 裁判所の役割
(1)
私たちが,紛争に巻き込まれた際,自力で救済を図ることは困難である。ましてや,複雑に成長した現代社会においては,いついかなるトラブルに遭遇するかも知れない危険をはらんでいる。
(2)
かかる状況下において,私たちがトラブルに巻き込まれた時,紛争を最終的に解決してくれる公的機関,それが裁判所である。労働事件,交通事故等については,裁判所以外の組織・機関により,紛争解決のサービスが行われているのも事実である。しかし,法律関係の錯綜する昨今,多種多様な事件解決に対応できるのは,やはり裁判所であろう。このように,裁判所が紛争を最終的に解決するサービスを提供してくれるため,私たちは,安心して生活することができるのである。
2 裁判所は紛争解決機関として機能しているか(司法改革アンケートから)
(1)
では,そのような存在である裁判所が,現代社会において,国民のニーズにあったサービスを提供しているだろうか。
(2)
岐阜県の地方議員アンケート(司法改革アンケート)では,次のとおりの回答がなされている。「現在の裁判制度は市民に十分利用されているか」との問に対し,「十分利用されている」と回答したのは,
472名のうちわずかに12名にすぎない。「十分とはいえないまでも,まあまあ利用されている」と回答した 121名を加えても,28%である。「あまり利用されているといえず,改善の必要がある」
150名,「ほとんど利用されているとはいえず,大幅な改善や改革の必要がある」95名の両方を併せたものは,52%にのぼる。以上の回答から,「国民のニーズにあったサービスを提供しているだろうか」に対する答えは,ノーと言わざるを得ないであろう。
(3) 同アンケートでの,利用されない原因として,回答者
401名のうち,「弁護士の数が少ないなど,市民と弁護士との接点が極めて小さい」98名,「裁判に時間がかかりすぎる」 106名,「弁護士の費用が高すぎる」
109名となっている。
(4)
では,裁判が,なぜ国民のニーズからかけ離れた存在になったのか,裁判官数及び裁判所に係属する事件数の関係から,1つの回答を見いだしてみる。
3 岐阜県における裁判官数及び事件数の関係
(1)
平成元年(1989年)以降の岐阜県における裁判官数の推移は,資料1のとおりである。なお,当該資料の「地方・家庭裁判所」とは「判事・判事補」数であり,「簡易裁判所」とは「簡易裁判所判事」数のことである。
現在の裁判官の配置は以下のとおりである。
岐阜地裁本庁 所長(判事)1名;判事7名;判事補5名
岐阜地裁大垣支部 判事2名;判事補1名
岐阜地裁高山支部 判事補1名
岐阜地裁多治見支部 判事1名;判事補1名
岐阜地裁御嵩支部 判事補1名
岐阜簡易裁判所 簡易裁判所判事1名;判事補2名(兼任)
大垣簡易裁判所 簡易裁判所判事1名;判事2名判事補1名(兼任)
高山簡易裁判所 判事補1名(兼任)
多治見簡易裁判所 簡易裁判所判事1名;判事1名判事補1名(兼任)
御嵩簡易裁判所 判事補1名(兼任)
中津川簡易裁判所 簡易裁判所判事1名(兼任)
八幡簡易裁判所 簡易裁判所判事1名(兼任)
(2)
上記のように,平成元年(1989年)には26名いた裁判官(簡易裁判所裁判官を含んだもの)は,平成14年(2002年)には合計23名になっている。判事・判事補の合計数は若干の増加となっているが,簡易裁判所判事が9名から3名に大幅に減少しているのである。
とすると,判事・判事補が増加した分,地裁の裁判官が余裕を持てたか,あるいは簡易裁判所判事が大幅に減少した分,簡裁の裁判官が3倍大変になったか,というと決してそうではない。なぜなら,地裁の裁判を担当している判事・判事補20名のうち10名が,簡易裁判所判事を兼務している,つまり,簡裁の事件も担当しているのである。したがって,地裁・簡裁を通しての,判事・判事補だけでなく簡易裁判所判事も含めた全体としての裁判官数が重要なのである。
(3) 他方,県下の事件数推移を示したのが,資料2ないし7である。以下,各資料を基に事件数の推移を検討する。
@ 岐阜地裁民事・行政事件事件数の推移
ア 資料2−1は,岐阜地裁民事・行政事件新受事件数の推移を示したものである。全体事件数は,昭和59年(1984年)にピークを迎えた後,平成3年(1991年)まで減少し,それ以降は増加傾向にある。過去20年を振り返り,全体事件数を比較すると,昭和56年(1981年)の事件数は7542件であったのに対し,平成13年(2001年)では1万3560件となっており,事件数は約
1.8倍に増加している。
イ 資料2−2は,民事通常訴訟事件新受事件の事件数を示したものである。全体事件数は,昭和61年(1986年)にピークを迎えた後,平成2年(1990年)まで減少し,それ以降は増加傾向にある。資料上最も古いデータである昭和58年(1983年)と平成13年(2001年)の事件数を比較すると,昭和58年(1983年)の事件数は
966件であったのに対し,平成13年(2001年)では1328件になっており,事件数は約 1.4倍に増加している。
A 岐阜地裁保全・執行事件の推移
ア 資料3−1は,岐阜地裁保全事件新受事件数の推移を示したものである。全体事件数は,昭和59年(1984年)にピークを迎えた後,平成元年(1989年)まで減少し,それ以降はほぼ横這いである。過去20年を振り返り,全体事件数を比較すると,昭和56年(1981年)の事件数は
700件であったのに対し,平成13年(2001年)では 417件になっており,事件数は約4割減少している。
イ 資料3−2は,岐阜地裁執行事件新受事件数の推移を示したものである。全体事件数は,昭和61年(1986年)にピークを迎えた後,平成3年(1991年)まで減少し,その後は増加傾向にある。資料上最も古いデータと平成13年(2001年)を比較すると,昭和58年(1983年)の全体事件数は1830件であったのに対し,平成13年(2001年)では2840件になっており,事件数は約
1.5倍に増加している。
B 岐阜地裁破産事件数の推移
資料4−1,2は,岐阜地裁破産事件の新受件数及び既済件数を示したものである。新受件数の全体事件数を見ると,昭和59年(1984年)にピークを迎えた後,事件数は減少しているが,平成元年(1989年)以降事件数は増加傾向にある。過去21年を振り返り,全体事件数を比較すると,昭和56年(1981年)の事件数は
135件であったのに対し,平成13年(2001年)では2206件になっており,約16倍に増加している。
C 岐阜地裁刑事事件数の推移
ア 資料5−1は,岐阜地裁刑事訴訟事件新受事件数の推移を示したものである。全体事件数は,昭和60年(1985年)にピークを迎えた後,その後はほぼ横這いである。過去20年を振り返り,全体事件数を比較すると,昭和56年(1981年)の事件数は
953件であったのに対し,平成13年(2001年)では 1146件になっ ており,事件数は若干増加している。
イ 資料5−2は,岐阜地裁における訴訟・略式・交通即決事件を除いたその他の事件数の推移を示したものである。全体事件数の変動は大きく,昭和63年(1988年)にピークを迎えた後,平成4年(1992年)まで減少し,その後も増減を繰り返している。過去20年を振り返り,全体事件数を比較すると,昭和55年(1980年)の事件数は1974件であったのに対し,平成10年(1998年)では1948件になっており,事件数は若干減少している。
D 岐阜県内の簡裁における事件数の推移
ア 資料6−1は,岐阜簡裁民事・行政事件新受事件数の推移を示すものである。全体事件数は,昭和60年(1985年)にピークを迎えた後,平成元年(1989年)まで減少し,平成2年(1990年)以降は増加傾向にある。過去20年を振り返り,全体事件数を比較すると,昭和56年(1981年)の事件数が8053件であったのに対し,平成13年(2001年)では1万8567件になっており,事件数は約
2.3倍に増加している。
イ 資料6−2は,岐阜県内の簡裁刑事訴訟新受事件事件数の推移を示したものである。全体事件数は,昭和58年(1983年)に一旦ピークを迎えた後,昭和63年(1988年)までは
200件台で推移し,その後は 平成11年(1999年)に249件となっている他は100件台でほぼ横這い状態にある。過去20年を振り返り,全体事件数
を比較すると,昭和56年(1981年)の事件数は 296件であったのに対し,平成13年(2001年)では
172件になっており,事件数は約4割減少している。
E 家裁事件数の推移
ア 資料7−1は,岐阜家裁家事事件新受事件数の推移を示したものである。全体事件数は昭和60年(1985年)にピークを迎えた後,平成3年(1991年)まで減少し,その後は増加傾向にある。過去20年を振り返り,全体事件数を比較すると,昭和56年(1981年)の事件数は4393件であったのに対し,平成13年(2001年)では8469件になっており,事件数は約
1.9倍に増加している。
イ 資料7−2は,岐阜家裁少年事件新受事件数の推移を示したものである。全体事件数は,昭和61年(1986年)にピークを迎えた後,平成3年(1991年)まで減少し,それ以降はほぼ横這いである。過去20年を振り返り,全体事件数を比較すると,昭和56年(1981年)の事件数は6438件であったのに対し,平成13年(2001年)では4323件になっており,事件数は約3割減少している。
(4)
以上のように,県下の事件数は,一部を除いて増加傾向にある。最後に,昭和55年(1980年)及び平成10年(1998年)の岐阜地裁・簡裁の民事・行政事件及び刑事事件,家裁事件の事件総数を比較する(すべての事件数が把握できる平成10年(1998年)と比較する)。昭和55年(1980年)の前記事件総数は2万7900件であるのに対し,平成10年(1998年)の前記事件総数は4万2257件であり(資料2,5,6,7参照),事件総数は約
1.5倍に増加している。この結果から見ても,全体的に事件数は増加傾向にあると言える。
4 裁判官数及び事件数から見えてくるもの
(1)
上記のように,事件数が増加の傾向にあるのに対し,地方裁判所・家庭裁判所を担当する判事・判事補の裁判官数は,横ばいであり,簡易裁判所を担当する簡易裁判所判事数は減少している。この現状においては,国民が紛争を解決して欲しいと望んだところで,適正かつ迅速な裁判の要請が充たされることは困難である。
(2)
以上のデータから,増加傾向にある事件数に十分対応できるような,人的体制を裁判所が整えることが必要である。岐阜県において,裁判官の増員は急務である。
1 弁護士数
資料1−2は,県下における弁護士数の推移を示したものである。なお,県下の弁護士数は,平成14年(2002年)10月15日現在91名となっている。平成元年(1989年)の県下の弁護士数75名と比べ,16名増加している。
2 岐阜県下の事件数
他方,平成13年(2001年)における,県下の地裁における民事・行政の事件総数のみを見ても
1万3560件である。そして,民事・行政以外にも,刑事・家事等多様な事件が存在し,増加傾向にあることは前述の通りである。かかる多種多様かつ増加傾向にある事件を,前記弁護士数でカバーするのは,数字から見ても困難であると言えよう。
3 弁護士増員の必要性
複雑に進化した現代社会においては,様々な事件が存在し,弁護士に対する社会的ニーズも多様化している。特に,行政指導で訴訟によらない解決がなされてきた従来の社会から,事後解決型の社会に変貌すると想定される21世紀の社会においては,弁護士の役割が大きくなることが予想される。従って,裁判官のみならず,弁護士の増員も検討する余地がある。
(3)裁判外紛争解決手段(ADR)の充実 −紛争の早期・円満な解決のために |
1 ADRの意義
(1)
裁判(訴訟)による紛争処理は,手続が厳格であったり,比較的時間や費用を要するという面もある。そのため,裁判によらずに,利用者の自主性を活かした解決,簡易(柔軟)・迅速・低廉な解決,多様な分野の専門家の知見を活かした解決を目指すシステムも求められる。これらの民事紛争における裁判外紛争解決システムを
ADR(Alternative Dispute Resolution)
と総称している。
(2)
日本におけるADR機関には,行政型・民間型・裁判所付属型とがある。行政型ADRは国または地方自治体が運営するものであり,民間型ADRは民間の団体が運営するものである。裁判所付属型ADRは裁判所で行われている民事調停・家事調停が挙げられる。他方,行政型・民間型は,数こそ多いがあまり利用されていないものもある。利用されない原因としては,裁判所の調停とは異なり時効を中断する効力がない,合意内容に違反しても改めて訴訟をしなければ強制執行をすることができないなどの難点があることが指摘されている。
(3)
ADRの利点及び利用をどのように確保するかは,そのADRの制度設計と運営の如何に関わっている。同時に,どのような人材を確保するか,どれほど市民に周知しているかも重大な課題である。今後,もっと規制緩和が進められれば,もっと必要になると思われるため,設置する行政や団体等と利用する側の市民を含めた協議が求められるところである。
2 行政機関による制度(行政型ADR)
(1) 労働委員会
労働組合法に基づく制度であり,公益・使用者・労働者をそれぞれ代表する同数の委員で構成される労働委員会が,労働争議の調整(あっせん,調停,仲裁)および不当労働行為事件の審査・救済を行う。労働委員会は行政委員会であり,不当労働行為の救済命令は行政処分である。
岐阜県地方労働委員会の利用状況は,調整事件は年1〜3件であり,審査・救済事件は数年に1〜2件である。1960〜1970年頃は年10件を超えることも多かった。
(2) 公害審査会
公害等調整委員会設置法,公害紛争処理法に基づく制度であり,公害に関係する民事上の紛争の処理にあたる。処理の方法は,あっせん,調停,仲裁および裁定である裁定には,損害賠償責任の有無および額を判断する責任裁定,因果関係のみを判定する原因裁定がある。責任裁定については,裁定後30日以内に損害賠償に関する訴訟が提起されないときは,当事者間に裁定内容と同一の和解が成立したものとみなされる。
岐阜県公害審査会の利用状況は,昭和年代は年1〜3件はあったが,平成に入ってからは2,3年で1件という状況である。内容は,騒音・振動・悪臭などである。
(3) 建設工事紛争審査会
建設業法に基づき設置される建設工事紛争審査会は,建設工事の請負契約に関する紛争の解決を行う。解決の方法は,あっせん,調停および仲裁である。
岐阜県建設工事紛争審査会の利用状況は,1975年(昭和50年)から1988年(昭和63年)までは年0〜2件であったが,1989年(平成元年)以降は1〜5件である。申立の半数以上が調停である。
(4) 消費生活センター
消費者からの相談・苦情などを扱っている。
岐阜県消費生活センターでは,年間5000件以上の相談があり,その3〜4割が解決している。また,解決困難な事例については,岐阜県弁護士会内の消費者問題救済センターと連携をとって解決に当たっている。
3 民間機関による制度(民間型ADR)
(1) 各種PLセンター
1995年製造物責任法施行を機に設けられた製品分野ごとの製品の欠陥に関する相談及び紛争解決(主として示談あっせん)の機関である。現在,医療品PLセンター,化学製品PLセンター,ガス石油機器PLセンター,家電製品PLセンター,自動車製造物責任相談センター,住宅部品PLセンター,消費生活用品PLセンター,生活用品PLセンター,日本化粧品工業連合会PLセンター,プレジャーボート製品相談室,防災製品PLセンターなどがある。その他,日本クレジットカウンセリング協会,不動産適正取引推進機構もあるが,いずれも業界団体が母体となっているものである。
(2) 医事紛争処理委員会
各都道府県医師会の一機関として設置されており,会員(医師)の医療事故が発生すると,患者側・遺族側と交渉し示談している。
4 弁護士会による制度
(1) 示談あっせんセンター
全国の弁護士会がそれぞれの弁護士会に設置し,運営する紛争解決機関であり,岐阜県弁護士会も1998年3月に発足させた。しかし,全国どこでも解決事件の8割から9割が和解ないし和解的仲裁判断による解決であり,純粋の仲裁判断による解決は各センターともほとんどないかあっても年数件にとどまる。岐阜県でも発足以来2件のみである。
(2) 財団法人日弁連交通事故相談センター
全国の弁護士会に設置されている財団法人日弁連交通事故相談センターは,交通事故の相談及び示談あっせんに無料で応じている。いずれの場合でも,被害者側・加害者側を問わず,中立公正な立場で実施し,迅速な解決に向けてサポートをしている。
岐阜県では,相談件数が徐々に増加し,2001年には
416件となっている。あっせんも,開設当初は年間10件以下であったが,1992年以降は20件以上となり,2001年には56件もの申立があった。そのうち約8割が2〜3回の話合いで,示談成立している。大いに効果を挙げているといえる。
(3) 住宅紛争審査会
住宅品質確保促進法の制定に基づき,指定住宅紛争処理機関の行う紛争処理業務の支援,その他住宅購入者等の利益の保護及び住宅に係る紛争の迅速かつ適正な解決を図るため,2000年4月から,財団法人住宅紛争処理支援センターが発足した。岐阜県弁護士会は,その指定住宅紛争処理機関として指定され,建設住宅性能評価書がある住宅(評価住宅)についての紛争を解決(斡旋・調停・仲裁)している。まだ,評価住宅が少なく取扱い件数は0である。
(4) 各種法律相談
法律相談自体がADRと言えるかどうかはともかく,市民からの相談は紛争の予防あるいは紛争の早期解決に大いに役立っている。そのため,相談件数は極めて多く,弁護士会館にて実施している相談だけでも年間約1800件(日弁連交通事故相談センターの交通事故相談を除く)あり,その内容も一般の法律問題のみでなく,多重債務問題,刑事被害者問題,民事暴力問題,子どもの人権問題,女性の人権問題,高齢者・障害者問題など拡大している。現在,弁護士会館にて法律相談を行っているのは平日と土曜日の昼間だけであるが,今後は夜間あるいは日曜日の相談も視野に入れているところである。
また,岐阜県弁護士会は,弁護士会館にて法律相談を行っているのみでなく,美濃加茂市,八幡町,中津川市,大垣市,高山市,多治見市に法律相談センターを設置し,2000年度(2000年4月〜2001年3月)には約
400件(大垣は2001年1月から,高山は2002年3月から。なお,多治見は2003年1月開設のため件数には含まれていない。)の相談を受けている。
さらに,弁護士会は,県内各地で行われている各団体主催の法律相談にも積極的に出かけ,市民の相談にのっている。
1 総論的問題
(1) 既に紹介されたとおり,岐阜県内の裁判所が新たに受け付けた事件の総数は,1989年に比して1998年は,
1.7倍にも増加している。
(2) これに対して,岐阜県内の裁判官数は,
1989年 26名 → 2002年 22名(所長を除く)
と減少している。
(3)
この人数の裁判官でゆとりある事件処理が可能であるならば問題はないが,現実は,1裁判官が担当する事件数,1裁判所が抱え込む事件数は,以下に見るとおり,飽和状態に達しているのではなかろうか。
2 審理の現場(弁論・証拠調べなど)
(1)
同一時刻(午前10時あるいは午後1時10分)に,多数の事件が重ねて行われるので,1事件当たりに割り当てられる時間はわずかにとどまり,弁論の際に十分に争点を絞ったうえで立証計画を立てる時間的余裕がない。
逆に,裁判所が1事件に多くの時間を割くと,他の事件の当事者・代理人は,場合によっては30分以上も傍聴席で待たされることもまれではない。
(2) 証拠調べ期日が,数か月後にしか入らない場合がある。
特に,集中証拠調べを実施する場合,午前全部,午後全部のように,長時間を割く必要があるが,事件数が多いために,相当先の期日しか指定できない。
これでは,審理促進のために集中証拠調べを励行しようとする新民事訴訟法の趣旨に逆行しかねない。
(3)
岐阜地裁管内には,かつて,本庁,大垣支部及び高山支部に刑事合議部が置かれていたが,合議事件数が格別減少したという事実がないにもかかわらず,現在では,本庁に1部が残るのみである。その影響もあって,2000年には,合議事件週2回の開廷でも対応することができず,裁判所から弁護士会に対し,1回で結審するよう要請がなされたことがあった。
また,本庁の刑事単独部においては,多数の事件処理のために,審理回数1回,審理時間40分で審理を終結することを予定して公判期日が指定されている。
このため,裁判関係者は常に時間を意識した審理をせざるを得ず,刑事裁判が形骸化・画一化し,被告人に対する刑事裁判の感銘力が薄れてしまっている。また,時間が少ないため,被告人質問において,犯行の遠因となった諸事情や今後の更生の意欲などを詳細に述べさせることが困難な場合が出てきており,十分な弁護活動ができなくなってしまっている。
そのため,岐阜県弁護士会では,2002年4月の総会にて,このような40分1回結審裁判に反対し,裁判官の増員を求める決議を採択した。
3 訴訟の終結(判決・和解など)
(1)
証拠の評価について説得的な判断が示されないなど,判決理由が不十分であり,代理人が本人に対して判決結果を説明するに困難を来すことがまれではない。
この傾向は,必ずしも専門的分野の訴訟に限らない。
(2) 家事審判事件の中には,申立てから2年以上経過して(この間格別の審理もないまま)審判がなされない例もある。
(3) 裁判所の都合により,頻繁に,判決期日が延期される。
(4) また,岐阜地裁管内の裁判官の病気を理由に,審理期日や判決期日が延期された例は驚くほど多い。
なお,女性判事・判事補が増加しているので,妊娠・出産のための長期欠勤が予想されるにもかかわらず,(上記の病気欠勤も含めて)これに備えた人員配置が施されていないため,1人が長期欠勤しただけでも,容易に填補がなされない。
また,かかる場合,当人の残任期中の填補者のみならず,後任者にしわ寄せが行くことになるのではないか。
4 司法改革による変化
(1) 岐阜司法改革アンケートでも,
380回答中,現状の裁判官の数が多いとの回答は3回答しかなかったのに比べ,極めて少ない・少ないとの回答が 234回答であった。
現実に自分が裁判の当事者となった経験や知人の裁判に立ち会った経験などから,「もっと法曹人口を増員して,丁寧な審理をしてほしい。」,「手続に費やす期間が長すぎる。」,「1期日における進捗感がなく,面倒になって途中で取り下げたくなった。」など,実態を知って司法の無力さに直面した回答者からの意見も目立った。
(2)
司法制度改革審議会の最終意見書は,司法試験合格者の増加を具体的数字,即ち,2004年には1500人,2010年ころには3000人と明示して達成基準として掲げており,2018年ころには実働法曹人口は5万人規模に達すると指摘する。
しかしながら,最高裁の試算では,事件数が現状どおり推移すれば向後約10年で
500人程度の裁判官が必要であると指摘するにすぎない。
仮に法曹人口が5万人に達しても,裁判官数が試算のように微増する程度では,裁判所を飽和状態から解放することなど不可能である。
1 裁判所の偏在
(1) 司法改革アンケートでは,裁判所の配置について改革を求める声が驚くほど多く寄せられた。
(2) 特に東濃地方からの回答には切実な思いが込められているものが多かった。
2 支部の充実度
(1) かつては大垣,高山にあった合議体が,現在は,本庁(民事2部,刑事1部)しかない。
(2) 既に見たとおり,非常駐の判事・判事補だけで構成される支部がある。
したがって,正式な開廷日以外に弁論期日を入れるという柔軟性がない。
(3) 各支部には,判事・判事補合わせても多くて2人しかいないので,準抗告審等は本庁でしか行われない。
(4)
地裁刑事事件を担当する裁判官が1人しかいない支部において,第1回公判期日前に保釈申請をすると,「同一の地に在る」「簡易裁判所」の裁判官が審理するという本来であれば例外的取扱い(刑事訴訟規則
187条2項)が常態化している。
(5)
支部では,刑事(訴訟,令状),民事(訴訟,破産,保全,執行),家事,少年にわたる全分野を1人で担当することもまれでない。
1 司法改革アンケートの回答から
司法改革アンケートにおいて,裁判官を選任する手続に市民が参加する方法を肯定する回答に,
「他の職業の実績を重んじて選任できる。」
「市民と裁判との間に隔たりが大きすぎるので,市民参加が必要である。」
「世間の良識が通用する裁判官に。」
などの理由が付されていた。
また,同アンケートの自由回答欄の中には,
「裁判官になるには,一定期間(3年以上)民間などで研修させるべき。」
「裁判官の教養不足。」
などを厳しく指摘する回答もあった。
2 市民感覚・ビジネス感覚と裁判官
弁護人任官経験者のうち2名が,近年,その経験を著作にしており,いずれも法曹関係者を中心に読者が多いので,必ずしも岐阜地方のみに当てはまるものではないが,厭わず,あえて引用する。
まず,『随想 弁護士任官裁判官』(高木新二郎著・社団法人商事法務研究会,2000年出版)は,世情に通じず,実社会でのビジネス経験の乏しい裁判官による裁判が,実務と乖離する危険性を指摘している。
また,『弁護士裁判官になる』(田川和幸著・日本評論社,1999年出版)は,次の点を指摘している。
@ 判断者は,常に人の批判を受けて自らを見直す必要がある。しかし,裁判官にはその機会が多くない。
A 若い左陪席は,裁判長,右陪席の先輩に判断・判決書き技術をマンツーマンで学ぶので,職人の世界に通じるものがある。優れた経験を学ぶこともできるという反面,「子飼い制度が裁判官の主体性を奪う。」。
B 手引・処理要領・執務資料などマニュアルや先例の世界。若いときからマニュアルに従う経験を重ねると,自立した裁判官,個性豊かな裁判官には育ちにくい。
C 田川元裁判官の心得
・ 税金で養われているという意識
・ 金太郎飴裁判官にならない意欲
・ 批判されることが少ないことの自覚
・ 人の不幸を生業にしているという意識
1 裁判所
(1) 岐阜地裁本庁の法廷棟(3階建て)にエレベーターがないのは,驚くべき時代錯誤ではないだろうか。
(2)
岐阜地家裁本庁の建物は,迷路のような構造であるので,案内板を充実させても限界があり,初めての来庁者が目的の場所へたどり着くのは困難な場合が多い。
2 司法関連施設
(1) 拘置支所・少年鑑別所の配置に工夫がほしい。
即ち,設置数が少ないという問題の外に,特に少年鑑別所の場合,定員の関係で,一時に多数の少年が関与する事件が発生すると,遠方の鑑別所に収容されるおそれがあり,面会に支障を来すことになる。
(2) 拘置支所・少年鑑別所の職員配置により,時間外・休日における弁護士接見に制限が多い。
(3) 各警察署の接見室が少なすぎるので,接見に支障を来す。
岐阜中警察署ですら,接見室は,弁護人用と一般用を兼ねた1室しかない。
1 弁護士数
司法改革アンケートでは,岐阜県内の弁護士の数(2000年6月現在の86人を前提)について,
425回答中 余りに少なすぎる 64
少ない 162
適当 77
多い 5
余りに多すぎる 2
わからない 115
と,弁護士数の不足が際だったとともに,東濃及び中濃地方からの回答には,弁護士の偏在による危機を訴える切実な回答が投げかけられた。
そして,適正人数としては, 100 〜 200名程度の回答が多かった。
2 「敷居の高い」弁護士事務所
司法改革アンケートでは,どこにどんな弁護士がいるかわからないし,相談料等の情報が不足していることなどが原因で,弁護士へのアクセスが困難となり,結果,弁護士に気軽に相談することができない,という痛烈な批判が相次いだ。
また,婉曲な表現ながら,裁判が長期化することについて,裁判所だけでなく弁護士にも責任があるとの指摘も見られた。
市民が,弁護士に対して紛争の発生を予防する相談や紛争が小規模な段階での相談をすることを躊躇してしまうなど,一般市民からは敷居の高い弁護士事務所であるとの旧来の印象が残ったままである。
(1)裁判所の人的・物的拡充
−裁判をうける権利の実質化 |
1 裁判官等の増員・改革等の必要性
(1)
前記3【岐阜の司法の推移と現状】のように,岐阜県内の各裁判所では,刑事事件以外では事件数が大幅に増加している。特に,破産事件は,社会状況を反映して,2001年(平成13年)は1980年(昭和55年)の約18倍増,1989年(平成元年)の約10倍増にまでなっている。県内人口の増加がそれ程でもないのに,事件数がこのように大幅に増加しているということは,社会の高度化・複雑化によって紛争が生じ易くなり,その紛争自体も多岐に渡り,複雑化していることによると思われる。この傾向は今後も続くと思われる。
(2)
他方,裁判官は増加していないばかりか,前記3【岐阜の司法の推移と現状】のように,岐阜県内の地方裁判所・家庭裁判所裁判官数は横ばい,簡易裁判所裁判官は減少している。つまりは,裁判官の負担が増えており(裁判官の中には,司法行政を中心とし,ほとんど裁判に携わらない者もいるため),裁判官1人当たりの手持事件数は
200件とも
300件とも言われている。その結果,裁判については省力化・簡略化(当事者の納得が得にくい),粗雑化(事案の検討も粗雑になる)が進み,和解のやり方については押しつける傾向(当事者の意向を充分聞く時間がない)が見られる。訴訟の進め方についても証拠調べ不足,期日の延期,記録検討の不十分などが指摘されている。しかも,土曜・日曜とも仕事をしている裁判官が約6割で,1日は休めたとする裁判官が約3割にも達するとのことであり,裁判官の過重労働・過労を生んでいる。
(3)
その意味で,裁判官の増加は必須である。市民への法的サービスにとって重要な,裁判の迅速・分かりやすさ,納得のできる裁判などは,裁判官の数が多くてこそできるものといえる。今すぐの増加は財政的な問題もあって困難な面もあるが,後記(4)の通り,僅かの司法予算の拡大で賄えることである。また人材確保の問題も,司法試験合格者の増加,裁判官任官者の増加などによっても解決しうる。私たちは,少なくとも岐阜県内の裁判官が早急に2倍増となるよう要請したい。
(4)
しかし,現在の裁判官は,たとえば野鳥の会に入会することもためらわれる程窮屈な生活を強いられていると言う。いわば,市民的自由が制約され,市民から遠い存在となり,さまざまな経験が不足し,その結果市民的感覚も豊かでないと言う傾向が強い。しかし,それでは「市民の司法」は絵に描いた餅となってしまう。そこで,経験豊富で市民感覚の豊かな,且つ裁判官としての独立性が十分に保障された裁判官をどう確保するかということも重大な課題である。その意味で,個々の裁判官の努力も必要であるが,日頃から市民と接し市民感覚を有している弁護士の中から裁判官を選ぶというシステム(法曹一元と言われる)が必要といえる。
ただ当面の課題としては,経験の浅い裁判官が法律事務所で一定期間,弁護士として業務をすることによって市民感覚を養うとか,弁護士自身が裁判官になること(弁護士任官と言われる)を進めていく必要がある。この弁護士任官のためには,弁護士が弁護士を廃業して裁判官になってしまうということの外に,弁護士のままで特定分野のみ,あるいは特定曜日のみ裁判官になるというシステムの構築も求められる。
このうち,民事調停及び家事調停の分野においては,弁護士が週1回以上丸1日執務する形態の非常勤裁判官制度を,2003年度中にも東京・大阪等の大規模庁を皮切りに実施することが,日弁連と最高裁の間で合意された。岐阜県での実施は今のところ未定であるが,今後検討対象となり得る可能性がある。
(5)
ところで,裁判所は裁判官だけでなく,書記官,調査官,事務官などで成り立っている。しかも,市民と直接,応対することが多いのは,書記官,調査官である。書記官は,裁判官の補助的な事務をし,円滑な裁判を実質的に支えているし,調査官は,裁判官の判断材料となる調査活動をしている。これら書記官,調査官の大幅増も不可欠である。
2 裁判所の増設・改善等の必要性
(1)
市民にとって,時間的にも距離的にも身近な裁判所が必要である。身近であってこそ利用し易い。とりわけ,弁護士が代理人に就かず,市民自身が裁判・調停に出ることの多い簡易裁判所や家庭裁判所は,より身近であることが求められる。その意味では,裁判所の増設こそ必要である。司法改革アンケートでも,その要求の大きさが分かる。しかし,行財政改革の流れで,むしろ裁判所の統廃合がなされ減少傾向にある。岐阜でも,1988(昭和63)年に関簡易裁判所が,1990(平成2)年には岐阜地裁八幡支部がそれぞれ廃止されている。司法予算の僅かの拡大で賄えることでもあり,増設も視野に入れる必要があるものの,現状では残念ながら困難と言える。
(2)
とはいえ,市民に最も身近な裁判所としての簡易裁判所・家庭裁判所は,やはり遠方にあっては使い勝手が悪い。そこで,常設ではなくても,特定曜日あるいは特定日のみ,市役所や町村役場あるいはターミナルとなる駅構内やその周辺施設で裁判(特に,調停・審判など)を行うようにしてはどうか。いわゆる巡回裁判所である。財政的問題もクリアーできるし,市民にとっても極めて利便性が高い。現に,この巡回裁判所は,廃止された関簡易裁判所管内のわかくさ・プラザを利用して実施できる制度設計がなされており(現在実施されているのは,簡裁・家裁の書記官が月各1回赴いて相談を受けるのみであるが,制度としては調停も実施可能である),極めて実現性が高いものである。ただ,市民に広く知られるところにはなっていないため利用者は少ない現状である。
また,平日の昼間では裁判や調停に行けないという人も少なくない。そこで,夜間裁判・夜間調停を実施するということも考えられる。岐阜ではまだ実施されていないが,現に夜間調停を行なっているところもある。関係者の協力によってできることであり,実現可能性は高い。ただし,裁判官・書記官など裁判所職員の労働過重とならないようにしなければならず,やはり人員の増加が必須なことである。
(3)
なお,施設としての裁判所を明るく利用しやすいものにすると言うことも必要であるが,何よりもバリアフリー化が強く求められている。残念ながら,岐阜県内では,法廷に車椅子で行けるのは大垣支部だけである。岐阜市の本庁にはエレベーターがあるものの,階段を使わずしては法廷に行けない。財政面での問題もあるものの,障害ある人の裁判を受ける権利,裁判を傍聴する権利を実質化するためにも最優先課題の1つである。
また,視聴覚障害者や知的障害者の裁判を受ける権利,裁判傍聴をする権利をどう保障していくかも重要な課題である。裁判所に,市民や障害者の声を聴き,それを実現していくシステムが求められる。
3 司法予算の拡大
(1)
司法改革にはやはりお金がかかる。その中核となる司法予算は,ここ数年3000億円強で推移しているが,これらの国家予算中に占める割合は,僅か
0.4%である。しかも,1955(昭和30)年の0.93%以降,徐々に減少しているのである。この司法予算を国家予算の 0.5%にまで回復すれば(つまり,僅か
0.1%増加すれば),裁判官の大幅増員,被疑者段階での国選弁護人制度の実現,法律扶助制度の充実,身近で利用しやすい裁判所への改善などは容易にできることである。
司法制度改革審議会意見においても,司法予算を増額する特段の配慮を指摘している。
(2) 法律扶助制度の拡充
国民の権利が裁判を通じて守られるためには,誰でも裁判を起こすことができ,裁判で訴えられたときには,自らを守るため受けて立つことが必要である。そのためには,弁護士費用,訴訟費用などを保障する法律援助の充実が必要である。
ところが,わが国の国庫補助金は30億円(2002年度)程度で,日本の世界的非常識の一つである。他国の状況を見ると,イギリス1544億円(2000年度),アメリカ811億円(1999年),ドイツ363億円(1990年度),フランス182億円(1993年)等となっており,わが国の低額ぶりが際立っている。予算の大幅な増額が求められる。
(3) 訴訟費用の低額化
訴訟提起に際し必要な印紙額は,裁判を利用する場合重要な問題である。あまりに高すぎては訴訟を提起して,裁判所の判断を求めること自体ができなくなってしまう。市民の裁判を受ける権利を十分に確保する意味でも,訴訟費用の低額化は必要なことである。
(4) 弁護士費用の敗訴者負担制度の問題点
今回の司法制度改革審議会の最終意見書では,弁護士費用を裁判の敗訴者に負担させるという制度が検討されることになった。しかし,最初から勝ち負けが決まっているという裁判は少ないのであり,この制度の導入は,市民の裁判を受ける権利を萎縮させる危険性をもっている。
この問題は,訴訟救助・法律扶助・権利保護保険などの制度と共に考えていくべきである。
1 はじめに
(1)
県下に必要な裁判官数の増加の必要性があることは,これまでの検討で明らかになった(本計画書,3岐阜の司法の推移と現状3(2)参照)。では裁判官数の増加が必
要として,どの程度の増員を見込むべきか。ここでは,岐阜地裁民事部及び刑事部を例にして,本庁及び各支部の事件数から,必要な裁判官数を試算する。そして,試算においては,審理の充実を図りつつ,他方で迅速な解決を図ることをも念頭において,試算する。
(2)
ここでの試算は,分析的に試算がなされ,また試算方針に賛同できる兵庫県地域司法計画・第1次案(兵庫案)を基にし(兵庫案の試算の方針について資料7−1参照),さらに神奈川地域司法計画も適宜参照した(試算上の事件数は,資料2ないし5参照)。
なお,試算は,本庁及び各支部の事件数が把握できる平成13年を基準にした。
(3)
試算の基本方針は,各事件完了に要する時間を算出し,それを元に1年間で1人の裁判官が対処できる事件数を計算し,県下の新受事件数をこれで割る方法をとる。
2 民事部裁判官
(1) 民事通常事件
@ まず,1人の裁判官が1年間で対処できる民事通常事件を算出する。そして,その人数を兵庫案に従い,単独事件で61件,合議事件で20件とする(資料8−2参照)。
A 合議事件の割合を全体の10%と仮定し,県下における平成13年度(2001年度)の民事通常事件に占める合議事件を下記の通りとする(資料2−2,平成13年度(2001年度)事件数欄参照。なお計算後の数値は少数点以下切り上げ)。
ア 本庁 82件(819件 × 0.1 = 81.9)
イ 大垣 18件(173件 × 0.1 = 17.3)
ウ 高山 6件( 52件 × 0.1 = 5.2)
エ 多治見 22件(217件 × 0.1 = 21.7)
オ 御嵩 7件( 67件 × 0.1 = 6.7)
これらに対処するのに必要な合議体の数は,それぞれを前記合議についての対処可能件数20で除した数であるから,以下のようになる。
ア 本庁 5 (82件 ÷ 20件 = 4.1)
イ 大垣 1 (18件 ÷ 20件 = 0.9)
ウ 高山 1 ( 6件 ÷ 20件 = 0.3)
エ 多治見 2 (22件 ÷ 20件 = 1.1)
オ 御嵩 1 ( 7件 ÷ 20件 = 0.4)
そして,合議体を構成するには,3名の裁判官が必要であるから,上記合議事件に必要な裁判官数は,本庁15名,多治見6名,その他3名となる。
B 次に,合議事件を除いた県下の平成13年度(2001年度)単独事件は,下記のとおりである。
ア 本庁 737件(819件 − 82件 = 737件)
イ 大垣 155件(173件 − 18件 = 155件)
ウ 高山 46件( 52件 − 6件 = 46件)
エ 多治見 195件(217件 − 22件 = 195件)
オ 御嵩 60件( 67件 − 7件 = 60件)
これに対処するのに必要な裁判官数は,それぞれを単独事件対処可能件数61件で除した数である。
ア 本庁 13人(737件 ÷ 61件 ≒ 12.1 )
イ 大垣 3人(155件 ÷ 61件 ≒ 2.54)
ウ 高山 1人( 46件 ÷ 61件 ≒ 0.75)
エ 多治見 4人(195件 ÷ 61件 ≒ 3.2)
オ 御嵩 1人( 60件 ÷ 61件 ≒ 0.98)
C 合議事件に必要な裁判官数と,単独事件に必要な裁判官数は,数の多い方で対応できるので,民事通常事件に必要な裁判官数は,上記単独事件に必要な裁判官数と同数となる。よって,合計22名となる。
(2) 保全事件
@ 本庁及び各支部の保全事件(仮差押え・仮処分)の新受件数は以下の通りである(資料3−1,平成13年度(2001年度)欄参照)。
ア 本庁 310件
イ 大垣 31件
ウ 高山 19件
エ 多治見 44件
オ 御嵩 13件
A 上記のうち,要審尋事件(審尋を要する事件)の割合を兵庫案に従い,10%とする(平成10年度(1998年度)司法統計年報上も,全地裁の保全事件数4万1235件のうち,仮処分事件で審尋が行われたのは,4158件であるから,保全事件全体にしめる要審尋事件の割合は1割である。当該部位神奈川案参照)。すると,本庁及び各支部の要審尋と非審尋の件数は以下の通りとなる。
ア 本庁 31件(要審尋)(310件 × 0.1 = 31 件)
279件(非審尋)(310件 − 31件 = 279 件)
イ 大垣 4件(要審尋)( 31件 × 0.1 = 3.1件)
27件(非審尋)( 31件 − 4件 = 27 件)
ウ 高山 2件(要審尋)( 19件 × 0.1 = 1.9件)
17件(非審尋)( 19件 − 2件 = 17 件)
エ 多治見 5件(要審尋)( 44件 × 0.1 = 4.4件)
39件(非審尋)( 44件 − 5件 = 39 件)
オ 御嵩 2件(要審尋)( 13件 × 0.1 = 1.3件)
11件(非審尋)( 13件 − 2件 = 11 件)
B ここで,保全事件について,1年間で1人の裁判官が対処可能な事件数は,要審尋で31件,非審尋で
288件とする(資料8−3(1)(2)参照。なお,ここでは,兵庫案の試算を一部採用していない)。そして,前記本庁及び各支部の事件数を,要審尋及び非審尋の事件数で除したものが,1年間で裁判官が対応可能な件数となる。 なお,要審尋及び非審尋事件を1人の裁判官が担当することを前提にする。
ア 本庁 1名(要審尋)( 31件 ÷ 31件 = 1)
(非審尋)(279件 ÷ 288件 ≒ 0.97)
イ 大垣 1名(要審尋)( 4件 ÷ 31件 ≒ 0.13)
(非審尋)( 27件 ÷ 288件 ≒ 0.09)
ウ 高山 1名(要審尋)( 2件 ÷ 31件 ≒ 0.06)
(非審尋)( 17件 ÷ 288件 ≒ 0.06)
エ 多治見 1名(要審尋)( 5件 ÷ 31件 ≒ 0.16)
(非審尋)( 39件 ÷ 288件 ≒ 0.14 )
オ 御嵩 1名(要審尋)( 2件 ÷ 31件 ≒ 0.06)
(非審尋)( 11件 ÷ 288件 ≒ 0.04)
以上より,保全事件に必要な裁判官は,本庁及び各支部で各1名となる。
(3) 執行事件(不動産・債権に関する強制執行及び担保権実行としての競売)
@ 兵庫案によると,1人の裁判官が1件の執行事件を終了するのに必要な時間は1時間とされている(資料8−4(1)参照)。
A そして,同案によると1人の裁判官が1年で対処できる執行事件は1232件である(資料8−4(2)参照)。
B 県下の平成13年(2001年)の執行事件は,本庁1773件,大垣 568件,高山 187件,多治見 651件,御嵩
422件である(岐阜地方裁判所総務課から公開された情報による)。
C そして,執行事件に必要な裁判官数は,前記件数を対処可能件数で除した数である。
ア 本庁 2名(1773件 ÷ 1232件 ≒ 1.44)
イ 大垣 1名( 568件 ÷ 1232件 ≒ 0.46)
ウ 高山 1名( 187件 ÷ 1232件 ≒ 0.15)
エ 多治見 1名( 651件 ÷ 1232件 ≒ 0.53)
オ 御嵩 1名( 422件 ÷ 1232件 ≒ 0.34)
以上より,執行事件に必要な裁判官数は本庁2名,各支部に各1名となる。
(4) 破産事件
@ 兵庫案によると,1人の裁判官が1年間で対処できる破産事件は,管財事件 154件,同時廃止事件が
616件である(資料8−5参照)。
A ここで司法統計年報から,管財事件と同意廃止事件の割合を算出する。ここでは,司法統計年報平成10年度(1998年度)の本庁の破産既済事件をベースにする。
本庁 100件(管財事件)
1042件(同時廃止事件)
上記データをベースにすると,管財事件及び同時廃止事件の割合は,管財事件10%(
100件),同時廃止事件90%(1042件)と考えられる。
B 以上を基に,平成13年度(2001年度)の本庁及び各支部における破産新受事件の管財及び同時廃止事件数を算出すると,下記の通りとなる(資料4−1,平成13年度(2001年度)欄参照)。
ア 本庁 126件(管財事件) (1257件 × 0.1 =
125.7件)
1131件(同時廃止事件) (1257件 −126件 =1131 件)
イ 大垣 36件(管財事件) (359件 × 0.1 = 35.9件)
323件(同時廃止事件) (323件 − 36件 = 323 件)
ウ 高山 10件(管財事件) ( 98件 × 0.1 = 9.8 件)
88件(同時廃止事件) ( 98件 − 10件 = 88 件)
エ 多治見 36件(管財事件) (358件 × 0.1 = 35.8件)
322件(同時廃止事件) (358件 − 36件 = 322 件)
オ 御嵩 14件(管財事件) (134件 × 0.1 = 13.4件)
120件(同時廃止事件) (134件 − 14件 = 120 件)
C そして,破産事件に必要な裁判官数は,下記の通りとなる。
ア 本庁 1名(管財事件) ( 126件 ÷ 154件 ≒ 0.82名)
2名(同時廃止事件) (1131件 ÷ 616件 ≒ 1.84名)
イ 大垣 1名(管財事件) ( 36件 ÷ 154件 ≒ 0.23名)
1名(同時廃止事件) ( 323件 ÷ 616件 ≒ 0.52名)
ウ 高山 1名(管財事件) ( 10件 ÷ 154件 ≒ 0.06名)
1名(同時廃止事件) ( 88件 ÷ 616件 ≒ 0.14名)
エ 多治見 1名(管財事件) ( 36件 ÷ 154件 ≒ 0.23名)
1名(同時廃止事件) ( 358件 ÷ 616件 ≒ 0.52名)
オ 御嵩 1名(管財事件) ( 14件 ÷ 154件 ≒ 0.09名)
1名(同時廃止事件) ( 120件 ÷ 616件 ≒ 0.19名)
以上より,本庁3名(管財1名,同時廃止2名),各支部では各2名(管財,同時廃止各1名)が必要である。
(5) まとめ
@ 岐阜地裁において,民事事件必要な裁判官数は上記試算の通りである。
A ただし,まず破産事件については,事件数が少ない各支部では1名で足りると判断する。((4)Cの管財事件と同時廃止事件の値を足しても1名に満たないため。)また,各支部では保全・執行の事件数も少ないので,通常事件及び破産事件を担当する裁判官で対応できると考える。
B よって,最終的に民事事件に必要な裁判官数は下記の通り,32名となる。
| |
本庁 |
大垣 |
高山 |
多治見 |
御嵩 |
合計 |
| 民事通常 |
13 |
3 |
1 |
4 |
1 |
22 |
| 保全 |
1 |
|
|
|
|
1 |
| 執行 |
2 |
|
|
|
|
2 |
| 破産 |
3 |
1 |
1 |
1 |
1 |
7 |
| 合計 |
19 |
4 |
2 |
5 |
2 |
32 |
3 刑事部裁判官
(1) 刑事訴訟事件
@ まず刑事訴訟事件において,1人の裁判官が1年間で対応できる事件数を算出する。そして,その件数を合議・単独事件,否認・自白事件に分類し,裁判官が1年間で対処できる件数を,合議否認事件7件,合議自白事件51件,単独否認事件8件,単独自白事件56件とする(資料9−1参照)。
A 次に,県下における各事件数を検討する。前提として,事件数のうち合議事件,単独事件の占める割合を求める。平成13年度(2001年度)司法統計年報によると,全地方裁判所の刑事第1審終局総数は7万1379件,うち合議事件は5367件であるから,合議事件の割合は約7.5%である。合議事件のうち,否認事件は1706件であり,合議事件における否認事件の割合は,約32%である。また,単独事件6万6012件のうち否認事件は3329件であるから,単独事件における否認事件の割合は約5%である。
B 以上を基にすると,県下の合議及び単独事件は下記の通りとなる(事件数は資料5−1,平成13年度(2001年度)欄参照)。
ア 本庁 59件(合議)(734件 × 7.5% = 58.72件)
675件(単独)(734件 − 59件 = 675 件)
イ 大垣 15件(合議)(183件 × 0.075 = 14.64件)
168件(単独)(183件 − 15件 = 168 件)
ウ 高山 5件(合議)( 58件 × 0.075 = 4.64件)
53件(単独)( 58件 − 5件 = 53 件)
エ 多治見 8件(合議)( 97件 × 0.075 = 7.76 件)
89件(単独)( 97件 − 8件 = 89 件)
オ 御嵩 6件(合議)( 74件 × 0.075 = 5.92 件)
64件(単独)( 74件 − 6件 = 68 件)
C 次に,合議事件の否認及び自白事件の各件数は下記の通りである。
ア 本庁 19件(否認)( 59件 × 32% = 18.88件)
40件(自白)( 59件 − 19件 = 40 件)
イ 大垣 5件(否認)( 15件 × 0.32 = 4.8件)
10件(自白)( 15件 − 5件 = 10 件)
ウ 高山 2件(否認)( 5件 × 0.32 = 1.6 件)
3件(自白)( 5件 − 2件 = 3 件)
エ 多治見 3件(否認)( 8件 × 0.32 = 2.56件)
5件(自白)( 8件 − 3件 = 5 件)
オ 御嵩 2件(否認)( 6件 × 0.32 = 1.92件)
4件(自白)( 6件 − 2件 = 4 件)
D 以上より,合議否認事件に必要な合議体の数は,下記の通りとなる。
ア 本庁 3(19件 ÷ 7件 ≒ 2.71)
イ 大垣 1( 5件 ÷ 7件 ≒ 0.71)
ウ 高山 1( 2件 ÷ 7件 ≒ 0.28)
エ 多治見 1( 3件 ÷ 7件 ≒ 0.42)
オ 御嵩 1( 2件 ÷ 7件 ≒ 0.28)
よって,本庁3,他の各支部は各1の合議体が必要となる。
E 次に,合議自白事件に必要な合議体の数は,以下の通りとなる。
ア 本庁 1(40件 ÷ 51件 ≒ 0.78)
イ 大垣 1(10件 ÷ 51件 ≒ 0.2 )
ウ 高山 1( 2件 ÷ 51件 ≒ 0.03)
エ 多治見 1( 5件 ÷ 51件 ≒ 0.09)
オ 御嵩 1( 4件 ÷ 51件 ≒ 0.07)
よって,本庁及び各支部とも1つの合議体が必要である。
F そして,合議否認及び合議自白のうち,多い方の合議体の数で足りるので,合議否認事件を基準に考えればよい。よって,合議事件に必要な裁判官数は,本庁9名(3合議体),他の各支部は各3名(1合議体)となる。
G 次に単独事件における,否認及び自白の各事件数は下記の通りである。
ア 本庁 34件(否認)(675件 × 5% ≒ 33.75 件)
641件(自白)(675件 − 34件 = 641 件)
イ 大垣 9件(否認)(168件 × 0.05 ≒ 8.4 件)
159件(自白)(168件 − 9件 = 159 件)
ウ 高山 3件(否認)(53件 × 0.05 ≒ 2.65件)
50件(自白)(53件 − 3件 = 50 件)
エ 多治見 5件(否認)(89件 × 0.05 = 4.45件)
84件(自白)(89件 − 5件 = 84 件)
オ 御嵩 4件(否認)(68件 × 0.05 = 3.4件)
64件(自白)(68件 − 4件 = 64 件)
H そして,単独否認事件に必要な裁判官数は,下記の通りである。
ア 本庁 5名(34件 ÷ 8件 ≒ 4.25)
イ 大垣 2名( 9件 ÷ 8件 ≒ 1.13)
ウ 高山 1名( 3件 ÷ 8件 ≒ 0.37)
エ 多治見 1名( 5件 ÷ 8件 ≒ 0.62)
オ 御嵩 1名( 4件 ÷ 8件 = 0.5 )
よって,本庁5名,大垣支部2名,大垣以外の各支部各1名の裁判官が必要となる。
I また,単独自白事件に必要な裁判官数は,以下の通りである。
ア 本庁 12名(641件 ÷ 56件 ≒11.5 )
イ 大垣 3名(159件 ÷ 56件 ≒ 2.86)
ウ 高山 1名( 50件 ÷ 56件 ≒ 0.89)
エ 多治見 2名( 84件 ÷ 56件 = 1.5 )
オ 御嵩 2名( 64件 ÷ 56件 ≒ 1.14)
よって,本庁12名,大垣3名,多治見及び御嵩が各2名,高山が1名となる。
J 単独否認及び単独自白のうち,多い方の裁判官数で足りるので,単独自白事件を基準にすればよい。よって,本庁12名,大垣3名,多治見及び御嵩各2名,高山1名の裁判官が必要になる。
K 最後に,合議事件に必要な裁判官数と単独事件に必要な裁判官数のうち,多い方の裁判官数が必要な裁判官である。よって,合議事件に必要な裁判官数を基準にすればよいことになり,結局刑事訴訟事件に必要な裁判官数は,本庁12名,他の各支部は各3名となる。
(2) その他の刑事事件
@ 兵庫案によると,1人の裁判官が1件の令状事件を終了するのに要する時間は2時間とされる。他方,1年間の執務時間は1540時間であるから,1年間で対処できる令状事件は
770件である(資料9−2参照)。
A 県下の平成10年度(1998年度)の刑事訴訟事件を除く,その他の刑事事件新受件数は,本庁1412件,大垣40件,高山
241件,多治見17件,御嵩
238件である(資料5−2,平成10年度(1998年度)欄参照)。そして令状事件をこのうちの90%と仮定して(資料9−2(3)参照),令状事件数は本庁1271件,大垣36件,高山
217件,多治見16件,御嵩 215件となる。
B すると,本庁及び各支部に必要な裁判官数は以下の通りになる。
ア 本庁 2名(1271件 ÷ 770件 ≒ 1.65名)
イ 大垣 1名( 36件 ÷ 770件 ≒ 0.04名)
ウ 高山 1名( 217件 ÷ 770件 ≒ 0.28名)
エ 多治見 1名( 16件 ÷ 770件 ≒
0.02名)
オ 御嵩 1名( 215件 ÷ 770件 ≒
0.27名)
ここで各支部では事件数が少ないので,刑事訴訟担当の裁判官で令状事件に対応できると考える。よって,その他の刑事事件に必要な裁判官数は,本庁が2人と判断する。
(3) まとめ
@ 岐阜地裁において,刑事事件に必要な裁判官数は上記試算の通りである。
A ただし,まずその他の事件については,各支部では事件数が少ないので,刑事訴訟担当の裁判官で令状事件に対応できると考え,必要な裁判官数は本庁が2名と判断する。また,高山及び御嵩に関しては,刑事訴訟事件及びその他の事件が少なく,合議事件を本庁あるいは他支部で行うこととして,1名の裁判官で足りると考える。
B よって,最終的に岐阜地裁刑事部に必要な裁判官数は下記の通り,22名となる。
| |
本庁 |
大垣 |
高山 |
多治見 |
御嵩 |
合計 |
| 刑事訴訟 |
12 |
3 |
1 |
3 |
1 |
20 |
| その他 |
2 |
|
|
|
|
2 |
| 合計 |
14 |
3 |
1 |
3 |
1 |
22 |
4 岐阜地方裁判所に必要な裁判官数
(1)
上記のデータをまとめると,岐阜地裁に必要な裁判官数は民事事件32名,刑事事件22名となり,合計で54名の裁判官が必要となる。
(2) 他方,平成14年(2002年)における岐阜地裁の裁判官数は以下の通りである。
ア 本庁 民事部 8名
刑事部 4名(うち1名は大垣支部と兼務)
イ 大垣 3名(うち1名は本庁刑事部と兼務)
ウ 高山 1名
エ 多治見 2名
オ 御嵩 1名
よって,本庁及び各支部を合わせて裁判官数は,18名である(なお岐阜地裁所長を含めると19名)。
(3)
以上より,岐阜地裁に必要な裁判官数が54名であるのに対し,裁判官実数は18名であるから,裁判官数は約3倍の増員が必要との結論に達する。
5 岐阜家庭裁判所の裁判官
(1)
岐阜家庭裁判所の家事事件の実情を見るに,社会の変化を反映して,岐阜家庭裁判所においても,資料No.7の1「岐阜家裁家事事件の新受事件数推移」のとおり家事事件は全体として顕著な増加が見られ,この傾向は今後も続いていくと考えられる。例えば,10年前の平成4年と平成13年とを比較しても,家事事件総数の新受件数は,4485件から8469件と劇的に,そのうちの家事調停事件の新受件数は1228件から1790件と順次増えている。これらの事件全てを裁判官が担当するものではないが,最終的に裁判官が決裁することから,その負担の重さには著しいものがある。
(2)
少年事件についても,岐阜家庭裁判所では,資料bVの2「岐阜家裁少年事件の新受事件数推移」のとおり全体として事件は横ばいである。例えば,10年前の平成4年と平成13年とを比較すると,少年事件総数の新受件数は,4671件から4323件となっている。
しかし,この傾向は今後も続いていくかどうかは未定である。
(3)
ところで,家庭裁判所の事件は,民事事件などと比較すると,その態様が多様であり,その事件の種類の変動から容易に必要裁判官を算定することは困難であるとされている。
その際に,家庭裁判所の裁判官の定員を算定する方法として,裁判所において用いられている,民事事件の必要裁判官数からその一定比率で算定する方法がある。これによると,民事事件の必要裁判官数の3割とされている。
しかる時には,
本庁 19名 ×0.3 = 5.7名 6名
大垣
4名 ×0.3 = 1.2名 2名
多治見
5名 ×0.3 = 1.5名 2名
高山
2名 ×0.3 = 0.6名 1名
御嵩
2名 ×0.3 = 0.6名 1名
合計12名の必要数となる。
したがって,岐阜家庭裁判所本庁について言うならば,現在,主として家庭裁判所の業務を担当している裁判官(兼務者及び司法行政を中心に担当している所長を除く)は2名であるから,実質的には3倍の裁判官が必要となる。
1 全国における検察官の実情
全国的な実情は,法曹資格(司法試験に合格し一定の研修を履修した者)を有する検事が足りない。法務省自身が司法制度改革審議会に提出した資料によっても,「検察官・検察事務官の人員数がその業務量に比して圧倒的に不足」,「地方検察の弱体化,地方中小規模地方検察庁における検事配置の極小化,検事不配置支部の拡大」が指摘され,その人員不足の弊害として,「不十分な捜査,消極的な事件の処理」「告訴・告発事件への対応の遅れ」を指摘している。その結果,検事を2倍化することが必要と主張している。
2 岐阜における検察官の実情と必要検察官数
岐阜においても,法曹資格を有する検事は,現在9名であり,決定的に不足している。その不足を補うべく,法曹資格を有しない副検事11名が,刑法犯等の捜査及び公判活動に従事している。なお,検事9名・副検事11名は,少なくとも平成6年以降変わっていない(ただし,一時期,副検事が12名になったことがある)。
そこでの問題は,第1に,検察官が少ないことからその業務を副検事に担当させ,副検事が担当する業務を更に検察事務官が担当する構造になっていること,第2に,経済不振などを反映して刑事事件が岐阜においても増加しており,その対応に迫られていることなどである。特に,検察庁が関与する地裁での刑事事件が,平成6年では
964件,以降 993件, 941件, 869件,
927件,1067件,1159件,そして平成13年は1146件であり(資料5),検察庁が関与する家裁での少年事件が,平成6年では3804件,以降3762件,4116件,4545件,4834件,4230件,4209件,そして平成13年は4312件である(資料7−2−(2))ように,10数%も増加しているにもかかわらず,検事9名・副検事11名体制が長年続いていること自体大いに問題がある。
以上のように,法曹資格のある検察官は決定的に不足しているが,検察庁の受任件数などの詳細な資料が十分に把握できていないため,業務量に応じた必要な検察官数を出すことはできない。しかし,少なくとも,現在,刑法犯事件を担当している副検事を検事にすることが必要である。その場合には,岐阜県における法曹資格を有する検事は,現在の9名を21名に増員することが必要である。
1 岐阜における法曹養成の準備
今後,司法の役割が増大することが予想される中で,県内でも,県内の司法を担う人材を育成する必要がある。
司法制度改革審議会意見書は,法科大学院設置を提言しており,全国各地の大学で法科大学院設置の動きがあるが,現在,岐阜県内に法科大学院設置の準備をしている大学はない。そのため,2004年とされる法科大学院開始時までに県内に法科大学院を設置するのは困難な状況にある。
2 岐阜における法科大学院構想
もっとも,意見書は,将来的には,年間3000名の新規法曹の確保を目指すとしている。そして,平成14年現在の司法修習においては,全国約1000名の司法修習生のうち約0.8%にあたる8名を,岐阜県内で養成している実績がある。岐阜県内で全国の0.8%の法曹を養成するとすれば,年間24名であり,法科大学院が成り立ちうる人数である。
また,司法改革アンケートにおいては,法科大学院に関する質問の回答
413名中,「岐阜にも必ず設置するべきである」との回答は62名,「岐阜に設置できるのであればその方がよい」との回答は 210名,両方の積極的意見は合計
272名(65%)にのぼっている。
したがって,当面は,愛知県内に設置される予定の法科大学院に岐阜県内の法曹・自治体とも実務家教員派遣・インターンシップ受け入れ等の形で関与することにより,県内の司法を担う人材の育成を行っていくことになるが,同時に,将来,岐阜県内に法科大学院を設置できるかどうか検討を進めるべきである。
1 利用度
前記の通り,裁判外紛争解決手段(ADR)は,利用者の自主性・非公開・簡易(柔軟)・迅速・低廉・専門性などの利点を有した紛争解決システムである。しかし,裁判所での民事調停・家事調停は多く利用され,消費生活センターも多数の相談が持ちこまれ,解決に資している。財団法人日弁連交通事故相談センターの示談あっせんも多く利用されている。弁護士会の法律相談も大いに利用されている。しかし,その他の制度は必ずしも十分に利用されているとは言えない。
2 情報提供の不足
勿論,そのADRの目的・制度設計が何であるかによって利用状況も異なってはくるものの,何よりも重要なのは市民に対するADRに関する情報提供であり,周知徹底である。あらゆる機会を通じての広報,インターネットの利用などをし,そこで分かりやすい説明をしていくことが求められる。と同時に,どのような人材を確保するかも重要である。専門性・柔軟性・公正性などを兼ね備えた担い手はADRの生命でもあり,岐阜県弁護士会としても意義を認識し,積極的に関わっていく必要がある。更に,今後は利用者である市民と設置者である行政や団体,そして弁護士会などを含めた協議が必要ではないか。
3 ADRの今後
現在,ADR自身も,さまざまな改革をしている。例えば,労働組合と使用者とのトラブルを扱ってきた労働委員会は,労働組合の組織率低下,長引く不景気などを受け,個々の労働者と使用者との労働条件等に関するトラブルについてのあっせんを行うという「個別的労使紛争処理制度」を2001年10月1日から設けた。同じく2001年10月1日から,岐阜労働局及び県内5つの労働基準監督署(岐阜・大垣・高山・多治見・関)では,「総合労働相談コーナー」を設け,職場における労働条件その他労働関係に関する事項についての紛争(個別労働関係紛争)を,迅速かつ適正に解決するための援助サービスを無料で実施している。具体的には,「総合労働相談コーナー」におけるトラブル解決のための各種情報提供,労働局長による助言・指導,「紛争調整委員会」による紛争当事者の自主的な紛争解決を目指したあっせんも行っている。
岐阜県弁護士会の住宅紛争審査会(前記3・(3))も新しい試みであり,市民の利用を期待している。示談あっせんセンターの利用拡大に向けた情報提供も進めていきたい。
1 地方自治体と司法の関わり
これまで司法に関する事務は,国レベルで問題とされていたため,地方自治体が司法に関して積極的・計画的に関与しようということはあまりなかった。すなわち,1999年改正前の地方自治法2条10項は,「司法に関する事務」は国の事務と定め,普通地方公共団体はこれを行ってはならないと定めていた。
しかし,地方分権の観点から,1999年同条項は廃止され,