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地方自治法改正による補充指示権創設に反対する会長声明

2024.06.13

 衆議院本会議は、令和6年5月30日、大規模な災害、感染症のまん延等、国民の安全に重大な影響を及ぼす事態における特例を含む地方自治法改正案を、賛成多数で可決した。

同特例では、国が地方公共団体に対し、その事務処理について国民の生命等の保護を的確かつ迅速に実施するため講ずべき措置に関し、必要な指示ができるものとされている。

 この必要な指示は、個別法の規定では想定されていない事態のため個別法の指示が行使できず、国民の生命等の保護のために特に必要な場合に、閣議決定をもって行い、事後に国会への報告をするものとされている。なお、衆議院本会議に先立つ衆議院総務委員会では、国からの指示は、自治体の意見や地域の実情を踏まえ、必要最小限とすることなどを求める付帯決議が可決されている。

しかしながら、現行法は法定受託義務に限って、個別法に基づいて国に地方公共団体への指示権を認めているが、同特例は、自治事務と区別せず、個別法の定めがなくても国に指示権を与えるものであり、本来対等である国と地方の関係を変容させるものである。地方自治体の自治事務に対する統制強化が強く懸念される。

また、現行法では、国の地方公共団体への指示は、「緊急性」を要件として認められているのに対し、同特例ではかかる要件が外され、国民の安全に重大な影響を及ぼす事態が実際に発生した場合のみならず、発生する「おそれ」がある場合にも指示権を行使しうるとするなど、国が指示権を行使できる場面を大幅に拡大している。同特例の想定する「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」や「発生するおそれがある場合」という文言が漠然としており、指示権が濫用される危険がある。

 政府は、コロナ禍において国と自治体間の調整・連携が不十分だったことを指示権の範囲を拡大する理由とする。しかし、突然の休校要請がかえって子どもたちや教育現場を混乱させたり、厳格なPCR検査の指針により検査を受けなかった陽性患者が重症化したように、現場から遠く限定された情報しか持っていない国の判断がかえって自治体の業務や住民の生活に混乱を招いた実例もある。また、大規模災害等の非常時においてこそ、自治体による地域の具体的状況の把握とそれに応じた適切な対処・対応が切実に求められる。かかる場面で中央からの統制を強め、自治体の自主性を奪うことは、地域住民の安全や権利を守るという観点から弊害が大きい。国の補充的な指示を設けなくとも、国と地方とが連携・情報共有等をすれば足りると考えられる。

このような指示権を認める同特例を含む本改正案は、自治体の方針に反して自治事務に容易に介入する権限を国に与えるものであり、国と地方の「対等・協力」の関係を崩して自治体の団体自治を侵害するものであって、憲法の地方自治の本旨に反する。

同年5月21日の記者会見において、岐阜県の古田肇知事からも、今般の改正について、国からいかなる事項について指示がなされるのかが明確になっていないことを指摘し、地方公共団体ともっと協議していただきたいとする発言があった。

現行自治法は、自治事務に対する是正の指示の要件を厳格に規定し、かつ、別途、個別法の根拠規定を要するというものである。これは、自治事務に対する国の関与に関する個別法の規定の制定の都度、慎重に吟味するという姿勢の表れと思われる。そうであれば、政府は、パンデミックや大規模災害等の際における自治事務に対する国の関与が必要であるのかどうかやその要件を考え、個別法の制定改正の提案をするべきである

以上より、本改正案のうち必要な指示を定めた改正部分(第252条の26の4、第252条の26の5)については、地方自治の本旨に反するものであって、削除すべきである。

 

                              令和6年6月13日

                              岐阜県弁護士会

                              会長 武 藤 玲央奈

 

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