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非司法競売手続の導入に反対する会長声明

2008.01.12

法務省は、裁判所が関与しない不動産競売手続(以下、「非司法競売手続」という)の導入を検討しており、関係団体への意見聴取も最終段階に来ている。
 しかしながら、現状の競売手続は、申立から売却までに要する期間は約4分の3が6ヶ月以内と短縮され、売却率も改善してきており、全国では80%を超え、東京地裁の売却率は100%に極めて近い数字に達している。現在の競売手続は円滑に機能しており、あえて非司法競売手続を創設する立法事実は見あたらない。
 また、現況調査報告書・評価書・物件明細書のいわゆる三点セットは、買受を検討する者には重要な情報を提供する書面であり、買受人の利益保護には欠かせないものである。
 しかるところ、法務省が検討している非司法競売手続は、A案からD案まであり、その内容が固まっているものではないが、裁判所の関与が全くないか、関与があっても制限的なものとされている。しかも現況調査報告書・評価書・物件明細書のいわゆる三点セットの具備が予定されていない案があり、オークションの主宰者は実行抵当権者ないしは誰でもよいものとし、配当・清算手続はオークションの主宰者や実行抵当権者が行うとする等を内容とするものである。
 しかし、いわゆる三点セットの具備がないものは、買受人の利益保護からは極めて問題である。
 また、最低価格を設けない競売は、落札額の低下に結びつきやすく、それはとりもなおさず債務者の弁済額の減少となり、債務者やその保証人の利益を害する虞がある。さらに、かかる制度の制定は、一般の方も安心して買受に参加できるよう不法占有を排し、執行妨害排除のための強力な改正をなしてきた方向性に逆行する懸念がある。もとより、裁判所が関与しない競売手続においては、暴力団をはじめとする反社会的勢力がその手続に関与して、反社会的勢力の不当な利益獲得の場となることが容易に想像できることである。近時、暴力団等の反社会的勢力は、フロント企業等通常の企業等の姿を装って株式取引や企業買収等に進出していることはつぶさに指摘されているところである。このように、非司法競売手続には様々な問題点がある。
 よって非司法競売手続の導入には強く反対するものである。

2008(平成20)年1月12日
岐阜県弁護士会
会長 渡邊 一
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