消費者庁の創設及び地方消費者行政の充実を求める会長声明
食の安全に対する信頼を大きく揺るがした毒物混入餃子事件,続発した一連の食品偽装表示事件,こんにゃくゼリーによる窒息死事件,多数の被害者を出した英会話教室の倒産事件,手口を替えては繰り返される悪質商法,全国で200万人近く存在すると推定される多重債務問題等,消費者の安全と安心を脅かす事件・事故は後を絶たない。
岐阜県においても,集団消費者被害事件が,クレジット・悪質商法関連事件を主として毎年のように発生している。また,消費者相談の数は県の窓口に寄せられた数だけでも年間1万件を超えており,潜在的な被害者数はこれを遥かに上廻るものと思われ,市民の身近に存在する行政の窓口の強化は急務である。
福田康夫内閣総理大臣は,本年4月23日,消費者行政推進会議において,「消費者の視点から政策全般を監視し,消費者を主役とする政府の舵取り役となる消費者庁を来年度から発足させる」との意向を表明し,消費者庁を消費者行政全般についての司令塔と位置づけ,消費者に身近な問題を取り扱う法律の消費者庁への移管や,地方の消費者行政の強化を打ち出し,そのために必要な予算・法律案の準備を進めるとした。
当会は,政府が消費者保護に対してこのように積極的に取り組む姿勢を示している点を高く評価するものである。
消費者被害は多岐・多様な分野で発生し,かつ,多数の消費者を巻き込んで大規模となる。そのため,被害の防止と救済には,市民の身近に存在する行政の相談窓口を充実させ,被害を早期に発見するとともに,情報を一元的に集約した上で,事件の解決や被害の拡大防止のために迅速に対応できる体勢を確立することが不可欠である。
しかしながら,現状の相談窓口は縦割り行政に対応して複数の行政機関に分散設置されており,情報の一元化や事件への迅速な対応が困難な状況にある。
さらに,全国の相談件数が増加しているにもかかわらず,地方自治体の消費者行政予算は年々削減されており,十分な相談体勢を取れないなどの弊害も生じている。
これらの問題の解決のためには,全国規模で一元的に被害情報を集約して,調査分析を行い,早期に事件を解決ないし防止する十分な権限を有する消費者庁を設置することが急務である。
当会は,その実現のため,以下の制度の創設拡充を強く求める。
1 消費者の苦情相談が,消費者生活窓口における助言・あっせん等で適切に解決救済されるために,地方自治体の相談窓口を充実・拡大させ,相談員らの雇用形態を抜本的に見直し,消費者問題に精通した相談員の養成を図るなど,必要な人的・物的制度を構築し,かかる制度を維持するために必要な予算を国の責任で確保すること。
2 消費者庁は,地方の消費者相談窓口,消費者,事業者,公益通報者からの被害関連情報を一元的に集約し,調査・分析・公表する権限を持つこと。
3 消費者庁は,消費者政策についての企画・立案を行い,必要があれば,関係省庁への勧告のみならず,許認可権限の事後的取消し等を含む事業者に対する直接の指揮監督権限を有すること。これを実現するために必要な立法及び関係法の移管を実現すること。
4 消費者庁は,消費者被害救済に実績のある民間人を新組織人事に積極的に登用し,消費者団体に新組織に対する調査・勧告申立権限を付与するなど,新組織の運営に消費者の参加と監視が可能な制度を導入すること。
岐阜県弁護士会
会長 幅 隆彦
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