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特定秘密の保護に関する法律案に反対する会長声明

2013.11.11

政府は、この臨時国会に「特定秘密の保護に関する法律案」を提出し、成立を目指している。
 この法律案は、「秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議」が平成23年8月8日付けで発表した「秘密保全のための法制の在り方について(報告書)」と内容的にほぼ同一であるところ、報告書の秘密保全法制は国民の強い批判を受けた。そして、当会も、平成24年4月27日、この秘密保全法制に反対する会長声明を公表した。その中では、①立法を必要とする理由を欠くこと、②情報公開がいまだ不十分であること、③特別秘密(当時)の概念が広範かつ曖昧であること、④禁止行為が曖昧かつ広範であり、罪刑法定主義に反し、また取材の自由・報道の自由に対する侵害となること、⑤情報管理者及びその周囲の者のプライバシーを侵害すること、⑥裁判の公開原則に反し、公平な裁判を受ける権利を侵害するおそれがあること等の問題点について指摘した。今般の「特定秘密の保護に関する法律案」においても各問題点はそのまま残されており、当会は本法案に対し、改めて強く反対する。

 本法案は、秘密保全法制に反対する会長声明において既に指摘したとおり、知る権利をはじめとする基本的人権及び憲法上の諸原理と正面から衝突する多くの問題点を有している。中でもとりわけ問題なのは、「特定秘密」に指定できる情報の範囲を、①防衛、②外交、③特定有害活動防止、④テロ活動防止の4分野としているが、いずれも広範かつ曖昧に過ぎ、どんな情報でもどれかに該当してしまうおそれがあることであり、また、「特定秘密」を指定するのは、その情報を管理している行政機関であるから、国民に知られたくない情報を「特定秘密」に指定して、国民の目から隠してしまえることになる。しかも、この「秘密指定」について第三者がチェックする制度がない。
 例えば、国民の関心が高い、普天間基地に関する情報や、自衛隊の海外派遣などの軍事・防衛問題は、「防衛」に含まれるし、今国民にとって最も不安である、原子力発電所の安全性や放射線被ばくの実態・健康への影響などの情報は、「テロリズムの防止」に含まれてしまう可能性がある。
 また、本法案は、一定の条件を満たす場合には行政機関から国会へ特定秘密を提供することができると定めているが(10条1項1号イ)、その取り扱いは秘密会で行うことが前提となっている上、ここにおいては行政機関の広範な裁量が認められており、国会による行政機関に対する監視機能を空洞化させるものになっている。これは、国会の最高機関性を著しく損なうものである。
 このように、秘密指定の運用によっては、本来国民が共有すべき情報さえも隠ぺいされてしまう危険性を否定できず、国民主権に反し、民主主義の根幹を揺るがす事態を生じかねない。
 この他にも、秘密の漏えいに関して、処罰範囲が広く、かつ刑罰が重いことから、取材・報道の自由に著しい委縮効果を及ぼすおそれがあり、国民の知る権利が侵害されるおそれがあること、取扱者の適正評価制度は、プライバシー侵害性が極めて高いことなど問題点は枚挙にいとまがない。

 さらに、政府は、本年9月に通常1か月以上とする期間を僅か2週間として意見募集を行い、その意見募集期間終了後、僅か1か月余りで閣議決定をした。しかも、この意見募集に寄せられた約9万件の意見の約8割が本法案に反対であった。政府は、本法案の作成過程においても、国民に深く考える機会を与えず、国民の考えを広く聞くことなく、あるいは国民の声を無視して、恣意的に立法化を進めようとしていると考えざるを得ない。

 以上のように、本法案には内容面、手続面の両面において重大な問題があり、当会は、本法案が立法化されることに強く反対する。

2013年(平成25年)11月11日
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会長 栗山 知
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