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裁判員裁判において国選弁護人の複数選任を柔軟に行うよう求める決議

2009.05.26

いよいよ本年5月21日から、裁判員裁判が開始され、さらに被疑者国選弁護制度が大幅に拡充される。
 当会としては、被疑者及び被告人の刑事手続における攻撃・防御の権利が十分保障されるよう、個々の会員が努力することは当然のこととして、会としても個々の会員が十全な弁護活動ができるよう、できる限りの支援をすることを惜しまないものである。
 ところで、新たに開始される裁判員裁判は、これまでどの会員も全く経験がない制度であることは論を待たない。これまで法曹三者による模擬裁判を重ね、これに弁護人役として関与した会員や、被告人役あるいは弁護人のバックアップメンバーとして関与した会員は、一定の経験を積んではいるが、あくまでもそれは模擬裁判であり、生の事件ではない。また、当会としては、これまで裁判員裁判を見据えて、捜査弁護、公判前整理手続、冒頭陳述や弁論、あるいは尋問の技術などの研修も重ねてきており、その成果も挙がっている。しかし、やはりそれも研修であって、実際の裁判員裁判を体験したわけではない。今後は、これらの成果を踏まえつつ、実際の裁判員裁判を体験する中で、創意工夫をし、経験を交流し、会員全体のものとしていくことが必要である。
 他方、裁判員裁判は、直接主義・口頭主義が徹底され、また、多くの事件は連日開廷で集中した審理が行われることが予定される。また、対象となる事案が重大事件であり、死刑求刑が予想される事案もある。したがって、たとえ公訴事実を争わない事案であっても重要な情状の主張・立証を行うことは当然予想されることであるし、ましてや公訴事実の全部又は一部を争ったり違法性や責任の阻却事由を主張したりするなどの事案は当然のことながら、いずれの事案においても十分な証拠開示請求を行って証拠を検討し、適切な攻撃・防御の方法を検討し、連日開廷の審理計画に適切に対応することが求められる。そのためには公判前整理手続にも、十分に対応していかなければならない。
 さらに、公判手続においても、直接主義・口頭主義に対応するには、公判手続進行中も詳細なメモを作成しながら、効果的な尋問や弁論に反映させていく必要があるし、公判前整理手続の段階では予想しなかった攻撃・防御を行う必要が生じる可能性もある。
 こうしたことから、裁判員裁判における弁護活動は、単独の弁護人で担うことはむしろ例外であり、複数の弁護人で対応することがあるべき姿であると言わねばならないし、複数弁護人が必要かどうかは、まさに当該事件を担当している弁護人こそが正しく判断できることである。
 なお、検察官は、裁判員裁判に単独であたるのか複数で臨むのかは、裁判所の許可を得ることなく検察官の裁量で決定できる。また、冒頭陳述や論告・求刑などの公判手続において、検察事務官にパワーポイントの操作などの補助を行わしめるのも、裁判所の意向とは無関係に検察官の裁量でなされる。なによりも、検察官は組織体で対応するのに対し、弁護人は個人で担当しなければならない。このような検察官との対比からしても、裁判員裁判は弁護人が複数で対応するのを拒むのは相当でない。
 当会としては、平成19年7月26日付けの最高裁判所事務総局刑事局長から各地方裁判所長に発せられた「訟ろ-06」を前提にしつつ、複数選任が必要と判断する弁護人の意思を尊重し、複数選任がなされることこそ、裁判員裁判が正しく実施される保障であると考える。
 よって、裁判所においては、特に裁判員裁判対象事件については、起訴後だけでなく被疑者段階においても、担当する国選弁護人が複数選任を要望した場合には、これに応えるべく、国選弁護人の複数選任に柔軟な対応を行うよう、求めるものである。
 以上、決議する。

2009(平成21)年5月26日
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