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学術会議会員任命拒否に抗議する会長声明

2020.11.10

学術会議会員任命拒否に抗議する会長声明

1 2020年10月1日、菅義偉首相は、日本学術会議が推薦した同会議の第25期新規会員候補者105名のうち6名の任命を拒否した(以下、「任命拒否」という)。同会議は、同月2日付で、菅首相に対し、上記6名が任命されなかった理由の説明と、上記6名の速やかな任命を求める要望書(以下「要望書」という。)を提出した。これに対する菅首相の「説明」は、「総合的、俯瞰的活動を確保する観点から判断をした」と云うものである。

2 日本学術会議法は、日本学術会議を「わが国の科学者の内外に対する代表機関」とし、「科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を浸透させることを目的」とし(法2条)、科学に関する重要事項を審議し、その実現を図ることなどの職務を「独立して」行うと定めている(法3条)。
 このように、同会議が政府からの独立を基本とする自律的組織であるため、その会員の任命については、同会議が「優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し、…、内閣総理大臣に推薦」し(法17条)、同会議の「推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する」と定める(法7条2項)。上記の条文に基づく同会議の趣旨や、「優れた研究又は業績」についての判断は専門家たる学術会議でなければ判断し得ないことからすれば、内閣総理大臣は同会議の判断を尊重し、形式的な任命権しか有しないと解される。1983年法改正の国会審議でも、政府はそのように答弁していた。かかる政府の答弁を受けて立法府である国会が法改正をしたのであるから、かかる解釈は政府のみならず立法者意思でもある。
  したがって、菅首相による任命拒否は、日本学術会議法の解釈を誤ったものであり、違法といわざるを得ない。
 
3 菅首相の「説明」によれば、憲法第15条「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。」を根拠にして任命を拒否できるという。しかし、同条は、公務員の選定・罷免の権利が国民主権原理に基づくという参政権の基本理念を定めた規定であって、法律の根拠もないのに、かかる条文から直ちに個別具体的な任命拒否権を導くことはできないというべきである。よって、菅首相の任命拒否は日本学術会議法違反である。
菅首相の任命拒否は、法第7条2項に、「但し、総合的俯瞰的見地から任命を拒否することができる。」という一般的抽象的な但書を読み込むものであり、形式的任命制の趣旨を根本的に改変するものであって、形式的にも実質的にも法律による行政の原理に反するうえ、それはもはや法改正に依らない但書の創設というべき解釈の逸脱であって、立法権を国会に付与した三権分立原理にも反する。

4 学問の自由は、学術組織の自律性の保障をも含むものであるから、任命拒否は、学術会議の自律性を侵害しており、直接的に学問の自由を侵害する憲法違反の行為であるというべきである。
 また、任命を拒否された6名の中には、安全保障法制や組織的犯罪処罰法改正に反対の意思を表明した学者が含まれており、政府の政策に反対すれば任命を拒否されるかもしれないなどという萎縮効果を及ぼすというほかなく、学問の自由や表現の自由、思想信条の自由などの憲法上の権利を脅かすものである。
  このように、今般の任命拒否は、学問の自由などの人権をも脅かすものである。

5 以上のように、今般の任命拒否は違法であり、かつ学問の自由などの人権を脅かすものといわざるを得ない。
よって、当会は、かかる任命拒否に強く抗議し、速やかな任命を求めるものである。

 

2020年11月10日
岐阜県弁護士会
会長 山 田   徹

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