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いわゆる「谷間世代」への一律給付実現を求める会長声明

2023.03.07

 司法修習制度は、我が国の三権の一翼を担う法曹を要請するために設けられた制度であり、司法試験に合格した者は、原則として司法修習を経なければ実務法曹となる資格を得ることができない。司法修習では、法曹が司法の担い手として公共的使命を負っていることを自覚させるとともに、法曹として十分な知識と実践力を備えさせるため、修習専念義務を課して兼業・兼職を禁止する一方で、司法修習生に公務員に準じた給与を支払う給費制が採用されてきた。

この給費制は終戦直後の1947年から60年以上に渡って維持されてきたが、2011年11月、司法制度改革の名のもとに廃止され、修習生は自己資金や貸与金によって生活しながら司法修習に専念しなければならなくなった。

給費制の廃止に対し、日本弁護士連合会や各地の弁護士会は、司法は社会インフラにほかならず、司法を担う法曹の養成は国の責務であるとして給費制の復活を求める様々な運動を展開してきた。その結果、2017年に裁判所法が改正され、修習給付金制度が創設され、不十分ながらも修習生に対する経済的な給付が実現した。

 ところが、同改正時、2011年11月以降2016年までの間に司法修習生となった新第65期から第70期(いわゆる「谷間世代」)に対しては、なんら是正措置が採られなかった。そのため、この6年の間に司法修習を行った谷間世代だけが、無給という不合理な制度での修習を強いられ、それによる経済的・精神的足かせを負ったままとなっており、その数は、全法曹の約4分の1(約1.1万人)にも及んでいる。

 この谷間世代の問題につき、当会でも2011年3月8日に「司法修習生に対する給費制の継続を求める会長声明」、2016年1月20日に「司法修習生に対する給付型の経済的支援を求める会長声明」、2019年4月17日には「『谷間世代』の不平等の是正を求める会長声明」を発出する等、谷間世代の救済のための活動を行ってきた。

各地でも谷間世代問題に関する活発な運動が続き、2022年度の中部弁護士会連合会定期弁護士大会では、「司法修習『谷間世代』への一律給付を求めるとともに、修習給付金の増額を求める決議」が採択された。

給費制廃止の違憲無効を訴えた新第65期給費制廃止違憲訴訟名古屋訴訟において2019年5月30日に言い渡された名古屋高等裁判所控訴審判決では、違憲無効の主張は認められなかったものの、付言において、裁判所は、立法府や関係機関に対して給費制が果たす役割の重要性を伝えるとともに、谷間世代の不公平は是正されるべきであること、一律給付などの事後的救済措置を立法府が考慮すべきことを指摘した。

 2021年には、日本弁護士連合会及び全国各地の弁護士会が、国会議員に谷間世代の問題を訴えて「谷間世代への応援メッセージ」を寄せてもらう運動に取り組み、2022年8月からは全国をいくつかのブロックに分けるなどし各地で「谷間世代への一律給付実現のためのリレー市民集会」を開催した。また同年11月29日には「これからの司法を担う谷間世代との院内意見交換会」を議員会館で開催するなど、谷間世代救済のための運動が高まり、これまでに国会議員から寄せられた応援メッセージは2023年3月3日現在360件に達している。この数は、国会議員の過半数にのぼり、谷間世代問題の是正に向けた大きなうねりとなっている。

 我々弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現するために日々活動しているのであり、谷間世代だけが取り残された不公平、不公正な状態を看過することは許されない。また、経済的・精神的足かせにより、将来を担っていく若手弁護士ら法曹の活動が阻害され、国民の権利の守護者としての役割が果たせない事態は、この国の司法のために何としても避けなければならない。

 よって、当会は、国に対し、谷間世代の問題を解消するための事後的是正措置として、谷間世代への一律給付を実現するよう強く求めるものである。

 

2023年(令和5年)3月7日

岐阜県弁護士会

会 長  御 子 柴 慎

 

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