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弁護士報酬の敗訴者負担に反対する会長声明

2003.09.08

現在、司法制度改革推進本部の司法アクセス検討会では、弁護士報酬の敗訴者負担制度の導入について検討がなされているが、これを一般的に導入することは、市民の司法へのアクセスを抑制するおそれが強く、市民に利用しやすい開かれた司法の実現をめざす司法制度改革の基本理念に反するものである。
 一般に、裁判になるケースで訴訟提起前に予め勝敗の見通しが明らかな事案はそれほど多くない。公害訴訟、行政訴訟、消費者訴訟などでは、証拠の偏在や情報の格差等のため、なおさら勝訴の見通しをもつことは困難であるが、司法的救済を求めて提訴した結果、新たな権利の確立と社会規範の創造という大きな役割を果たすものもあった。しかし、敗訴者が相手方の弁護士報酬を負担しなければならなくなると、訴訟の提起が著しく抑止されることとなる。
 潤沢な資金力を持つ国や大企業は敗訴の場合に相手方の弁護士報酬を負担する必要があったとしても訴訟を提起できるが、一般の市民にとっては、弁護士報酬の敗訴者負担が訴訟提起を躊躇させたり断念させたりすることは明らかであり、市民の司法へのアクセスを一層困難にする結果となる。
 司法制度改革の基本理念は、市民の利用しやすい市民に開かれた司法の実現である。司法制度改革審議会意見書は、市民が容易に自らの権利・利益を確保し実現できるよう、そして、事前規制の廃止・緩和に伴って、弱い立場の人が不当な不利益を受けることのないよう、様々な紛争が司法の場で適正かつ迅速に解決される仕組みを求めている。だからこそ、同意見書は、弁護士報酬の敗訴者負担は、これを「一律に導入することなく」、「不当に訴えの提起を萎縮させる場合には適用すべきではない」とした。
 反対に、弁護士報酬の敗訴者負担制度がないからという理由で訴訟をしなかったというような事例は、検討会でも検討されていない。
 以上のとおり、弁護士報酬の敗訴者負担は、市民の裁判の利用に極めて重大な影響を及ぼし、これを一般的に導入することは、市民を裁判から遠ざけ、社会の変化に対応した判例の発展や司法の活力ある法創造機能を阻害する。活力を失った司法は、行政や立法の追認機関となり、法の支配を社会の隅々に及ぼすという司法改革の本来の目的に逆行するものである。
 よって、岐阜県弁護士会は、弁護士報酬の敗訴者負担制度の一般的導入には強く反対する。

2003年(平成15年)9月8日
岐阜県弁護士会
会長 安藤 友人
 
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