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夫婦同姓の強制及び再婚禁止期間についての最高裁判所大法廷判決を受けて民法における差別的規定の改正を求める会長声明

2015.12.17

最高裁判所大法廷(寺田逸郎裁判長)は,昨日,夫婦同姓を強制する民法第750条について「合憲」とし,同条は憲法第13条,憲法14条1項及び憲法24条に違反しておらず,立法措置をとらない立法不作為も違法の評価を受けるものでないと判示した。一方,女性のみに6か月の再婚禁止期間を定める民法第733条については,立法不作為の違法は認めなかったものの,100日を超える再婚禁止期間を設けた部分について「違憲」とし,同条は憲法第14条1項及び憲法24条2項に違反しているとした。
 民法第733条の再婚禁止期間のうち100日を超える部分を違憲であるとした点については,再婚期間の短縮につながるもので評価し得るが,父子関係を確定するための医療や科学技術が発達した今日においては女性の婚姻の制約となる再婚禁止期間の撤廃まで踏み込むべきであった。民法第750条について合憲とした判断及び民法第733条について立法不作為の違法を認めなかった点は,判断を誤ったものである。
 民法第750条が定める夫婦同姓の強制は,憲法第13条及び同第24条第2項が保障する個人の尊厳,同第24条第1項及び同第13条が保障する婚姻の自由,同第14条1項及び同第24条第2項が保障する平等権並びに女性差別撤廃条約第16条第1項(b)の規定が保障する「自由かつ完全な合意のみにより婚姻をする同一の権利」及び同項(g)の規定が保障する「夫及び妻の同一の個人的権利(姓及び職業を選択する権利を含む。)」を侵害するものである。
 今回の最高裁判決でも,女性裁判官全員を含む5人の裁判官が,民法第750条について,憲法24条に違反するとした。岡部喜代子裁判官の意見によれば,「多くの女性が姓の変更による不利益を避けるため事実婚を選んでいる。不合理な要件を課しており婚姻の自由を制約するもの」とし,別姓を全く認めないことに合理性がなく,違憲であるとしている。多数意見でも,選択的夫婦別姓に合理性がないと断ずるものでなく国会で論ぜられ判断されるべきとした。
 法制審議会は,1996年,「民法の一部を改正する法律案要綱」を総会で決定し,男女とも婚姻適齢を満18歳とすること,女性の再婚禁止期間の短縮及び選択的夫婦別姓制度の導入を答申した。また,国連の自由権規約委員会は婚姻年齢に男女の差を設ける民法第731条及び女性のみに再婚禁止期間を定める民法第733条について,女性差別撤廃委員会はこれらの規定に加えて夫婦同姓を強制する民法第750条について,日本政府に対し重ねて改正するよう勧告を行ってきた。法制審議会の答申から19年,女性差別撤廃条約の批准から30年が経つにもかかわらず,国会は,上記各規定を放置してきたものである。
 当会は,国に対し,今回の判決で違憲とされた民法733条はもちろんのこと,法制審議会にて改正が答申され国連の各委員会から勧告がされている民法第731条(婚姻適齢)及び同750条についても,速やかに改正することを強く求める。

2015年(平成27年)12月17日
岐阜県弁護士会
会長 森   裕 之
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