司法修習生に対する給付型の経済的支援を求める会長声明
司法制度は、社会に法の支配を行き渡らせ、市民の権利を実現するための社会的インフラであり、司法修習は、この司法制度を担う人材を育成する制度である。
したがって、有為な人材の確保が不可欠であり、経済的な理由で法曹となることを断念することがないよう公費をもって養成することが重要である。
わが国では、こうした司法修習制度の重要性に鑑み、終戦直後から司法修習生に対して給与が支払われてきたが、2011年11月から給費制が廃止され、修習資金を貸与する制度(貸与制)に変更された。
近時、法曹を目指す者は、年々減少の一途をたどっているが、この原因の一つとして経済的な理由が指摘されている。すなわち、司法修習生には、修習以前から、大学や法科大学院における資金を必要として奨学金などの債務を負っている者も多く、修習資金を合わせた債務額が極めて多額に上る者も少なくない。こうした実情のため、従前の制度であれば、法曹を目指していた有為な人材が、経済的な負担を慮り、法曹を目指すことを断念しているというものである。
この事態を憂い、日本弁護士連合会をはじめとする多くの団体や個人らが、司法修習生に給付型の経済的支援を設けるための活動を行い、国会議員からも、この活動に対する賛同のメッセージが寄せられるようになった。
こうした中で、先日、国会議員からの賛同メッセージの総数が、衆参両院の合計議員数717名の過半数である359名を超えた。このことは、国民の代表者である国会議員の過半数が給付型の制度が必要であるということを認めたもので、非常に大きな意義を有するものである。
岐阜県では、昨年10月8日、県議会において、「法曹人口政策の早期見直し及び法曹養成制度の抜本的な見直しを求める意見書」を全会一致で可決承認している。この意見書には、司法修習生の修習のための資金が貸与制になったことから、有為な人材が法曹への道を断念せざるを得ない状況が生じており、住民に対する法的サービスの質的悪化が強く懸念される状況に至っていることが触れられている。
いまや国及び地方の双方から、有為な人材が安心して法曹を目指すことができるよう給付型の制度を設けることが求められているのである。
したがって、当会は、司法修習の意義を踏まえ、有為の人材が安心して法曹を目指せるよう早急に司法修習生に対する給付型の制度の創設を求めるものである。
岐阜県弁護士会
会長 森 裕 之
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