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司法修習生の給費制維持を求める会長声明

2003.09.08

1 現在、司法修習生に対して給与を支払う制度(給費制)を廃止しようとの動きがある。
 財務省の財政制度等審議会が「平成16年度予算編成の基本的考え方について」(本年6月9日)の中で給費制の早期廃止を提言するなど、財務省筋を中心とした圧力が強まる中で、司法制度改革推進本部の法曹養成検討会は「貸与制への移行という選択肢を含めて柔軟に検討する」との座長とりまとめを行った。
2 法曹養成制度は単なる職業人の養成ではなく、国民の権利擁護、法の支配の実現にかかわるプロフェッションたる法曹を養成するものである。そして、弁護士は、基本的人権の擁護と社会正義実現の担い手であるのに加えて、各種公益活動、公的弁護、公設事務所、法律相談センターなど公益性の高い分野を担い、実行する人的資源であり、その公共性、公益性が高い点においては、裁判官あるいは検察官と全く同様である。
 このように、法曹の養成は、国及び社会にとって極めて公共性・公益性の高い重要事項であることから、司法修習生に司法修習に専念させることを目的として、司法修習生に給与を支払う給費制が導入された。
 現在、医師養成の分野においても、研修医の生活を保障して研修に専念できる環境を整えるために国費を支出する動きがある。こうしたなかで、給費制を廃止することは21世紀の社会が求める高い質の法曹を養成するという新しい法曹養成制度の目的に反するものである。
 国は司法制度改革を実現するために、必要な財政上の措置を講じることが義務づけられているので(司法改革推進法6条)、財政事情を理由とした廃止は認められない。したがって、法曹養成とりわけ司法修習に対しては、可能な限り国費が投入されるべきである。
3 また、司法修習生には、司法修習専念義務が課されており、他の職業に就いて収入を得る方法を閉ざされているので、司法修習専念義務を課したまま給与を支給しないことは、合理的均衡を欠くばかりでなく、司法修習生の生計の維持を困難にする。
 加えて、司法修習生になる前に2年ないし3年の法科大学院に在学することから、その間に多額の学資や生活資金が必要となる。その上、司法修習生に対し給与を支給しないことは、経済的な負担を一層増大させるものである。
 そこで、法科大学院における学生の経済的負担を軽減すべきことはもとより、司法修習生に対しても、給費制を維持して、司法修習に専念できる態勢を整備すべきである。
4 法曹には多種多様な人材が求められるものであるが、経済的負担の大きさから一定の富裕層のみからの偏った人材しか輩出されなくなるとすれば、それは極めて憂慮すべき事態を招来するものであり、司法改革の趣旨にも反することとなる。
 よって、岐阜県弁護士会は司法修習生への給費制度は今後とも堅持されるよう強く求めるものである。

2003年(平成15年)9月8日
岐阜県弁護士会
会長 安藤 友人
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