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司法修習生の給費制維持を求める声明

2004.07.03

司法制度改革推進本部の法曹養成検討会は,本年6月15日,司法修習生に対する給費制に代えて,貸与制を平成18年度から導入する旨の意見の取りまとめを行い,今後かかる方向での法案作成がなされる見通しとなった。
 そもそも給費制,すなわち国費による法曹養成制度が今日まで採用されてきたのは,それが単なる有資格者の養成ではなく,「法の支配」を具現化するという高度の公共性を有する人材の養成であって,その存在が国民の人権擁護や民主主義の確立という国家にとっての至上命題の実現のため必要不可欠であるからである。
 今般の司法制度改革は,「法の精神,法の支配がこの国の血となり,肉となる」(司法制度改革審議会意見書)ことを目指すのであるから,上述の給費制の意義は時を経て薄れるどころか,近時ますます高まっていることは疑いようのない事実である。
 しかるに,法曹養成検討会において上述のような取りまとめがなされたことは,上述の給費制の意義を十分考慮に入れないまま,専ら財政事情のみに思いを致した審議結果と言わざるを得ず,極めて遺憾である。
 当会は,今後国会等の場で給費制の意義について今一度十分な理解と吟味がなされた上で,給費制維持の方向に向かうことを強く希望するものである。
 また,法曹養成検討会においては,任官者に返還を免除する旨の議論もなされ,取りまとめにおいても,返還免除のあり方は,関係機関の意見をも踏まえつつ,引き続き検討するとの留保が付されている。
 しかし,任官者に対する返還免除は,その実質は国家に奉仕する任官者に対しては事実上給費制を維持し,在野法曹である弁護士のみを本来の貸与制に移行させるものと言わざるを得ない。
 司法制度改革審議会意見書は,弁護士を含む「法曹がいわば『国民の社会生活上の医師』として・・・国家社会のさまざまな分野で幅広く活躍すること」を期待している。現実にも,弁護士は,国選弁護人,破産管財人等官公署からの委嘱事項を誠実に遂行し,さらには平成18年より業務開始予定の日本司法支援センターにおいても,その中心的役割を担うことが期待されているのである。それにも関わらず,弁護士と任官者を別異に取り扱うべき理由がどこにあると言うのであろうか。
 また,平成18年以降,法科大学院に在学した者が順次司法修習生として採用されることとなるが,既に多額の学費や生活資金等の経済的負担を背負ってきた司法修習生に対し,国家が優秀な人材を囲い込む材料として任官者に対する返還免除を利用する余地を生むことにもなりかねない。
 それゆえ,当会は,貸与制の導入が諸般の事情に鑑みやむを得ないものとなったとしても,任官者に対する一律,当然の返還免除には強く反対するものである。

2004年(平成16年)7月3日
岐阜県弁護士会
会長 矢島 潤一郎
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